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サイボウズ、さくらのトップが熱血対談!日本のITを斬りまくる 第3回

10年後を見据えた日本のあるべきクラウドの姿を占う

グローバル化とビッグデータの時代、日本のITはどうなる?

2014年01月27日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏と、さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏が日本のITを語り尽くす対談記事も、いよいよ最終回。今回はグローバル進出やAWSに対抗する日本のクラウドの差別化ポイント、さらにクラウドが実現するイノベーション、ビッグデータやIoTにまで話が飛ぶ。(コーディネーター TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)

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「米国進出……なんて寝言は寝てから言え」(青野)

大谷:お二方で共通しているのって、グローバルに対する姿勢。多くの国内IT企業は、わりと安易にグローバル進出を口にしますが、さくらも「来年は海外にデータセンター作る」とか言わないし。青野さんは「最初の米国進出は失敗した」と言い切った上で、2014年はグローバルに再挑戦するんですよね。

青野:今年は確かに本腰を入れますし、私もグローバル進出についてよく講演を頼まれますが、講演タイトルは「米国進出……なんて寝言は寝てから言え!」です(笑)。

田中:本当にそうですよね。

青野:日本の会社は、まずはアメリカ見てこいと思います。シリコンバレーで向こうの会社とミーティングしたとき、彼らの頭のよさ、グローバリゼーションの進み具合に驚きます。白人の割合はむしろ少なくて、中国やインド、韓国などの「世界選抜」のような人たちが、数年先を見据えて、ビジネスに全力投球している。そんな中、僕たちは末席に加えてくれたら、うれしいくらいな感覚です。

田中:現在、弊社のサービスは法律の問題などもあり、国内からしか使えない約款になっているのですが、IaaSの場合は、あまり言語の壁が関係ないので、海外市場は確かに魅力的です。ただ、現地に拠点を作って進出しましたではなく、いつの間に海外の人が使っていましたのほうが理想的ですね。

大谷:AWSも日本に進出したわけではなく、ユーザーがいつの間にか増えたので、あとからデータセンターやオフィスを作ったような感じですよね。

田中:海外に事務所作るって、その時点で「負けのフラグ」が立っている感じがします(笑)。

その時点で負けのフラグが立っている気がします(田中)

青野:シリコンバレーのベンチャーキャピタルに「こっちで事務所を作る」という話をすると、彼らは「こんな人件費の高いところに事務所を作ってどうする!」とネガティブに捉えるんです。特に開発者は引き抜きも多いので、ノウハウが意外と残らない。だから、「開発者をシリコンバレーで雇うのは、アホな選択肢だ」と言う人もいるくらいです。日本やベトナムに開発者がいる弊社は、むしろ評価されています。

田中:ただ、頭がよくて、コミュニケーションが得意な日本の優秀な学生は、けっこうGoogleとかに行っちゃうんですよね。で、いったん米国に行くと、日本に戻っても評価されない。だけど日本の会社に入ったら、ベンチャーは別として、グローバルに出してもらえない。シリコンバレーは、本来のイノベーションである技術で社会を変えようという奴がいっぱいいますけど、日本ではそういう人材は押さえ込まれちゃう。ここらへんはなんとかしないとですね。

「日本人だから日本のクラウド、という議論が気にくわない」(田中)

大谷:ひるがえって日本を見ると、やはり「対AWS」の話ってよくでてきますよね。ただ、現在の国内のクラウド業界って、私にはもう「AWS」と「それ以外」にしか見えなくて……。

田中:私たちも、月額980円の個人向けのVPSであれば、AWSに比べていい勝負ができています。AWSとか、場合によっては、さくらのクラウドからVPSに移るお客様もいるくらいです。ただ、クラウドという分野だと、やはり法人向けになるし、他社との連携も重要になるので、確かに「それ以外」に入っちゃいますね。

大谷:言い方は失礼ですけど、「それ以外」同士でもう少し連携してもよいのかなあと思います。

田中:クラウド事業者同士もけっこう考え方が違うんです。ラックを売るためにクラウドを提供する通信事業者、ハードウェアを売るためにクラウドを提供しているメーカーやSIerは多いけど、クラウドだけで稼ごうとしているところって意外と少ない。ビットアイルさんはラックを売りたいわけだし、IIJさんはハードを売るのではなく、SIを売りたい。こうなると、純粋にクラウドで勝負しているのって、当社とニフティさん、GMOクラウドさんぐらい。ただ、これだとAWSに対抗できないという危機感はあります。

大谷:あと、個人的には「ものづくりが得意な日本人だから日本のクラウドがいい」とか、「アメリカのクラウドは危ないから日本のクラウド使おう」という意見は、まずいなあと。情緒論、人文的な判断で日本のクラウドを評価するのではなく、オペレーション能力や省エネなどの数値できちんと戦うべきだと思います。

日本人だから日本のクラウドという意見はまずいと思います(大谷)

田中:まさに、その通り。その議論が多すぎるのが気にくわないです! 「日本人がやっている」ではなく、「日本人の強みや特性を活かしている」というのがポイントです。日本人がやっているクラウドのいくつかは、なんにも知らない下請けの人が低賃金で運用しています。これで日本のクラウドと言えるのかと。

青野:本当ですよ。買ってきたマシンにVMware入れただけで、クラウドといえるのかという話です。

(次ページ、「運用の8割はノウハウ。ソフトウェアは本質ではない」(田中))


 

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