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サイボウズ、さくらのトップが熱血対談!日本のITを斬りまくる 第2回

常識にとらわれないクラウドビジネスの捉え方とは?

クラウドビジネスはお客様もパートナーもハッピーにする

2014年01月20日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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サイボウズの青野慶久社長とさくらインターネット田中邦裕社長が日本のITを語り尽くす対談記事の2回目は、クラウドビジネスに焦点を当てる。クラウドビジネスへの決断は? クラウドで顧客との関係はどうなる? パートナーやコストに対する考え方など持論が飛び交う!(コーディネーター:TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)

edge

「クラウドだとお客様との関係がフェアになる」(青野)

大谷:両社ともクラウドビジネスに本腰を入れていますが、日本の企業はまだまだ及び腰ですよね。

田中:私もつねづね「クラウドは組織作り」と言っているんですが、クラウドって組織ごとクラウドに対応しないとビジネスできないと思うんです。

青野:どういうことですか?

田中:たとえば物販の会社がクラウドをやろうと思っても、評価の軸が違います。月額課金のクラウドは評価されない。流行で1~2年はやるんだけど、それを過ぎると経営者が先行投資の負荷に耐えられなくなります。結局、役員から雑音が出て、やめようという話になりますよね。評価軸がクラウドに最適化されないと、クラウドが難しいんです。AWSとかは、クラウドの頭でビジネスを進めていますが、日本のメーカーはそうなっていません。結局、大手ほどクラウドに対応するのは難しいですよ。

大谷:組織ごとクラウドという話であれば、サイボウズはまさにその方向ですよね。

青野:はい。僕たちも長らくパッケージを売ってきて、ずっと怖かったんです。創業以降、倍々ゲームで売り上げを伸ばしていたんですが、すべて新規ライセンスの販売でした。だから、新規ライセンスが頭打ちになったら、僕らは死ぬんだろうなとずーっと思っていたんです。それが怖くて、保守ライセンスを入れて、毎年お金くださいという商売に変えたところもあったし、実際データベースの「デヂエ」はパッケージにも関わらず、保守必須にしました。

新規ライセンスが頭打ちになったら、僕らは死ぬと思っていた(青野)

大谷:当時は大ブーイングでしたよね。

青野:はい。「サイボウズは創業当時の心を忘れた」とか散々言われましたから(笑)。でも、僕たちからすると、継続的にお金をいただかないと、バージョンアップができない。先ほど田中さんから出てきた、サステイナビリティの関係が、顧客と築けていけなかったんです。かといって、保守サービスもお客様によって、利用頻度が違うし、必ずしもフェアな関係というわけではありません。

大谷:そこでクラウドになるんですよね。

青野:クラウドだと、顧客との関係がフェアになります。トラブルがあったら、僕らがミスったから。トラブルなかったら、それは僕らが運用をがんばっているから。だから、僕らにとっては、クラウドはとても心地よいんです。

田中:ちなみに弊社も「サイボウズGaroon」や「デヂエ」を使っているんですけど、先日更新したものの、結局オンプレミス版です。なんでクラウドにしないんだろうと思いますが……。

青野:えーーっ? クラウド版じゃないんですか(笑)。

田中:お恥ずかしながら、うちのIT部門は、まだまだクラウド化しきれていなくて。少ない人数で運用回しているので、月曜日の朝とかうちのGaroon、重いんですよ。せめてうちのクラウドに載せてスケールアップして欲しい(笑)。ですから、運用管理まで含めて、クラウドがユーザエクスペリエンスを向上してくれるってすごいわかります。

運用管理まで含めてクラウドがよいというのは、すごくわかります(田中)

青野:でも、田中さんからその話を聞くのは、けっこう衝撃です。

田中:先日も「クラウドの利用規約」について相談してきたリスク管理部門に、そんなものいらないって怒ったんですけど、そういう日本の会社って多いんです。確かにIT部門も、リスク管理部門も困っているのはわかるので、トップの決断は重要になりますよね。その意味だと、パッケージをきちんと持っていて、クラウドへの移行を見据えているサイボウズ製品は、すごく安心感があります。

青野:ありがとうございます!

「パッケージの売り上げが減らない。クラウドって新しい市場」(青野)

田中:サイボウズさんは、クラウドやりながら、パッケージ版を売っているのがすごいです。

大谷:しかもパッケージの売り上げが減ってないんですよね。

青野:クラウドへの移行を決断したのは今から4年前で、いろんなところで「よくあのときクラウドへの移行を決断しましたね」と褒められるんですが、心の中で若干嘘があったんです……。

大谷:せっかく、先見の明があると思ったのに(笑)。

青野:正直、パッケージ版の売り上げが減るのは覚悟してました。「少なくとも1~2年は売り上げ減る。会社のみんな、ごめんな~」と思いながら、移行を決断したんです。でも、結局パッケージの売り上げは減らなかった。そこで「なんや!クラウド全開でええやん」と思って、いきなりアクセル踏みこみましたね。

大谷:クラウドやってもパッケージの売り上げ減らないのは、最初からわかってたんだくらいな勢いで(笑)。

田中:それはすばらしい。後出しじゃんけんでも、そのネタは活用すべきですね。

青野:あと、クラウドの顧客も想定と違っていました。さすがに16年間パッケージ版を売ってきたので、新規のお客様はほとんどいないだろうと思っていました。ほとんどがパッケージからの乗り換えなはずだと。でも、蓋を開けてみたら、クラウド版のお客様の4割が新規。つまり、今まで一度もグループウェア使ったことない人なんです。クラウドって「新しい市場」だなあと思いました。

田中:確かに。私たちも長らく月額7800円でレンタルサーバーを販売していましたが、その後、月額980円でVPS(仮想サー バー)を売り始めたんです。

月額980円でVPSを売り始めました(田中)

青野:やすっ!

田中:もちろん、1/8の価格なので、売り上げを保つには8倍売らなければいけない。でも、すでにVPSはじめて数年で、もう6倍のところまで来ました。あのときVPSを始めていなかったら、そのままAWSに乗り換えられていました。「エンジニア1人が1台持てるサーバーを作ろう」というコンセプトで、新しいお客様がどんどん使ってくれました。

(次ページ、「10年間、Pentium Ⅱのサーバー使っているお客様とかいます」(田中))


 

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