このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

最新ユーザー事例探求 第31回

1日1億PVをたたき出す人気Webサービスのインフラの舞台裏

さらば自社サーバールーム!pixiv、白河データセンターに移る

2013年12月16日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

自作サーバーにこだわる同社がデータセンターに移設した理由は?

 このように、ひたすら自社サーバー・自社運用にこだわってきたピクシブだが、2009年末、いよいよ“年貢の納め時”が来た。キャパシティ的にサーバーの増設が難しくなったのだ。店本氏は「当初5台だったけど、200台くらいに増え、人が入れなくなった。冷房でオフィスも寒くなりすぎたし、なにより光ファイバーの増設が限界になった。(FTTHを収容する)局舎も処理能力がいっぱいになってしまった」と語る。また、片桐氏の懸念はやや異なっており、「誰かが間違って、サーバーを壊しちゃうんじゃないかという心配の方が大きかった。犬(チョビ)もいたし(笑)」だという。

 おりしもpixivの収益が安定したタイミングで、オフィスの引っ越しとインフラのデータセンターへの移設を決定したという経緯だ。「自社サーバーのpixivというブランドもあったけど、それはいったん捨てて、旧社屋の画像サーバーをデータセンターに移すことを考えた」(店本氏)とのことで、自作サーバーとデータセンターのハイブリッド構成を目指した。そこでピクシブが選択したのが、IDCフロンティアのデータセンターだ。

 IDCフロンティアのデータセンターを選んだ理由は、ロケーションだという。「エンジニアが気軽に行けて、カスタマイズできるのが第一。自社サーバーでできたことができなくなるのが、一番イヤだった」(店本氏)とのことで、社屋から近い新宿のデータセンターを選んだ。また、サービス面での融通が利きそうという点も選定の理由だった。

 一方で、なぜクラウドを使わなかったのか?という理由も明確で、pixivでは自社運用の方が向いているからだ。最新のインフラ構築を手がけているエンジニアの道井俊介氏は、「pixivはハードウェア、ソフトウェアの両方で最適化されているので、AWSにそのまま持って行っても、おそらくコストは5倍近く上がります。AWSで運用するためには、オートスケールなどにも最適化する必要があるし、転送量がコストに大きくかかってくる。ですから、クラウドよりも、自社でシステムを構築した方が、安価にできる自信があります」と説明する。片桐氏も「pixivはトラフィックによって、売り上げが変動しないので、クラウドは向いていないかもしれない」と語る。ただし、新しいサービスを立ち上げる場合には、クラウドで運用することもあるという。ここらへんサービスの要件にあわせて、柔軟に選定しているようだ。

ピクシブ エンジニアの道井俊介氏

 現在は、旧社屋サーバールームから、メインのシステムをIDCフロンティアのデータセンターに移行している。移行のきっかけは、やはり2011年の東日本大震災だ。店本氏は「幸い、旧社屋のサーバールームに被害はなかったが、余震も起こっていたし、輪番停電の心配もあって、自社運用は難しいと悟った」と振り返る。停電の心配があったため、3・11以降、急ピッチでサーバールームからデータセンターへの移設を進め、夏に間に合わせた。

無尽蔵にサーバーを増やせる白河データセンターへ

 今進めているのは新たな画像トラフィックの拠点をIDCフロンティアの白河データセンターに構築する計画だ。

 IDCフロンティアが2012年10月に稼働開始した白河データセンターは、冷涼な気候を活かし、空調のほとんどを外気でまかなう省エネデータセンター。需要に応じて建設を行なうモジュール構造となっており、2号棟の竣工も予定されている。実際に白河データセンターを見学した道井氏は、「ラックが49Uと高く、そこにフルでサーバーを搭載しても問題ない電力供給と冷却能力がある」と、高密度な実装に魅力を感じたという。実際、同社は1Uサーバーをラックにめいっぱい詰め込んで、運用している。郊外と言うことで懸念したネットワークの遅延もほとんどなく、都内からの遅延は公称3.5ms(ミリセカンド)ときわめて低い。店本氏は「新宿と白河を連結するような使い方をしても、体感的には遅延は感じられなかった」と評価する。

外気空調をメインにした白河データセンター

 とはいえ、東京から新幹線で1時間以上かかる白河データセンターにサーバーを移せば、気軽にデータセンターに行けなくなるのも事実。メンテナンスのしやすさでIDCフロンティアのデータセンターを選択したことを考えると、ある種の矛盾ではある。これについて店本氏は、「とにかく無尽蔵にサーバーを増やせるというのは大きなメリットだった。新サービスがうまくいって、いきなり100台必要になる場合を考えても、白河データセンターであれば安心」と語る。

 また、本来失われるはずだったメンテナンス性という利点は、データセンター事業者のIDCフロンティアや、サーバーの納入とサポートを手がけるエーティーワークスの対応で補えた。たとえば、システム構築に関しても、白河での作業はすべてIDCフロンティアが行なったので、現地に行く必要もなかった。また、ネットワークの構成に関しても、「サーバーはわかるんだけど、ネットワークは弱い部分だった。でも、IDCフロンティアの営業の方に構成や導入まで提案、サポートしてもらった」(店本氏)とのことで安心して導入が進められた。サーバーにおける増設も、「サポート外ながら、エーティワークスがSSDやRAIDカードなどを試してくれる」(道井氏)とのこと。ほとんど現地に行かないで、メンテナンスや拡張などを実現できているという。

スマホやタブレット前提でネットワーク高速化が必要

イラストコミュニケーションサービス「pixiv」のトップページ

 インフラ面で課題になってきたのが、データ量の増大だ。サービス開始から今に至るまで、ユーザー数とPVの急激な増加に苦労してきた同社だが、データ量とトラフィックの増加は現在でも大きな課題になっている。ユーザーが利用する端末がスマートフォンとタブレットになって利用機会が増えてきたのに加え、イラスト自体も高解像度のデータを扱う必要が増えてきた。それを踏まえ、当初4Gbpsだった回線を、2012年8月に8Gbps、2013年には10Gbps回線を契約し、すでに12Gbpsに増速しているという。白河データセンターにも10Gbps回線を契約し、膨大なトラフィックを流す計画だ。

 このようにIDCフロンティアのデータセンターをベースに強固なインフラを構築したピクシブ。pixivとしての今後の計画について片桐氏は、「Webビジネスはユーザー数が重要なので、現状2割程度にとどまっている海外のユーザーを増やしたい。新規サービスとしては、ユーザー同士がモノやデータを売り買いをする“BOOTH”というサービスを準備している」と語る。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    PC価格高騰で4割の企業が「調達を延期」/“謎のExcelマクロ”は業務継続リスク/日本のデジタル行政、利用率・満足度とも最低レベル、ほか

  2. 2位

    ビジネス・開発

    「ドラクエXの世界観を壊さない」Gemini実装 プロンプトからセキュリティ、サーバー設計まで工夫の数々

  3. 3位

    ビジネス・開発

    首都高が「AIの高利用者」を1年で10倍に 非IT人材に刺さったGemini Notebookと“泥臭い”浸透策

  4. 4位

    TECH

    【提言】フロンティアAIが生む“脆弱性パッチの波” 企業はパッチ適用プロセスの見直しを

  5. 5位

    TECH

    「SCS評価制度」取得を目指す中堅・中小製造業のリアル 富士工業が考える「セキュリティは経営に役立つのか」の答え

  6. 6位

    TECH

    生命がわずかな熱を細胞内で維持する新しい原理を発見

  7. 7位

    デジタル

    約3000人のハッカーが侵入できなかったpCloud すべてはユーザー自身のデータを守るため

  8. 8位

    デジタル

    属人化の解消は多忙な“Aさん”を救うことから 切り札は「kintone×AI」を自然に使わせる仕組み

  9. 9位

    デジタル

    平均年齢60歳の現場を変えたZ世代女子 kintoneで電話・紙・入力をなくしたら、仕事が楽しくなった

  10. 10位

    デジタル

    大企業導入も順調なkintone AI時代の“市民開発×ガバナンス”基盤を目指す

集計期間:
2026年08月19日~2026年08月25日
  • 角川アスキー総合研究所