チームを強くするクラウド
もうひとつ、サイボウズがこだわっているのが、「チームを強くするクラウドである」ということだ。
コラボレーションツールで長年の実績を持つサイボウズは、もともと「チーム」ということにこだわってきた。「チームあるところにサイボウズあり」とのキャッチフレーズを使っていること、毎年開催している「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」に特別協賛しているのもそれを裏付ける。
「チームとは単に人が集まっただけの状態を指すのではなく、メンバーが共通のビジョンを持ち、役割分担をし、相互に依存する関係を持つ状態を指す」と前置きし、初公開とする「チームワークのシステム要件」を披露。「IDやアクセスなどの管理者による統治」、「メンバー゛てないものとの境界を実現する強固な認証」、「メンバー同士が会話できるコミュニケーション機能」、「いつでもどこでも作業を行えるためのマルチデバイス対応」など、10の要件をあげた。青野社長は、「チームの多様化が進んでいる。これに対応し、チームワークを推進するのがITである」として、同社のクラウドサービスが、チームワークの実現に最適であることを強調した。
社内に人がいなくてもサボっているわけではない
一方、基調講演のなかでは、プロジェクト、伝統企業、新規事業、工場、親子の絆、グローバルビジネスといった12の領域において、15社のクウラド導入事例を紹介したが、それとは別に、クラウドを活用した業務改革の事例として、青野社長は、サイボウズ自らの事例。10月に発生した台風26号は、日本国内に大きな被害をもたらし、首都圏の交通機関にも影響を及ぼした。
基調講演の冒頭、青野社長はこの話に触れながら、「首都圏への台風上陸が通勤時間帯に重なることで、社員の出社が危ぶまれていた。テレビ局の取材に対して、『明日は社員がほとんど来ないのではないか』ととっさに答えたら、翌日午前10時30分になっても、本当に社員が来なかった」と笑う。
当日のオフィスの席には誰も座っていない画像を見せながら、「ただし、これは台風が来たからといって、サイボウズの社員がサボっているわけではない。自宅にいながら、クラウドを通じて仕事をしている」と説明した。
青野社長も、元祖「イクメン」として、在宅勤務で社長業務を行っていた経験がある。クラウドを活用した在宅勤務が可能になったことで、いつでも、どこでものオフィス環境が実現でき、災害時や緊急時でも業務に支障を来さない体制が実現されていることを紹介してみせたわけだ。
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