誰もが"Win"になれる世界を
オーマイグラスは、効率のみを優先して既存のメガネ店と提携したわけではない。同社が目指しているのは、従来からある「ネットショップVSリアル店舗」という垣根を超えたビジネススキームを構築していくことだ。
「『競合に顧客をとられる』という考えから脱却し、ネットもリアルも持ちつ持たれつのWin-Winの関係を築きたいんです。だから、普通なら『自社で実店舗もオープンして……』と考えるところを、当社では、『すでに全国にたくさんのメガネ屋さんがあるのだから、そこと提携すべきだ』という発想になるのです」
この発想こそが、ネットとリアル双方の発展のベースになっている。
「既存のメガネ屋さんは、スペースに限りがあり、並べる商品には限度がありますが、ネット店舗は、比較にならないほどの商品を取り扱えます。その意味では、メガネ選びはネット店舗の方が有利です。ただし、ネット店舗は、アフターケアが弱い。そこは既存のメガネ屋さんに協力してもらいたい。」
実店舗との提携に踏み込んだのは、ネットとリアル、それぞれの優位性を分析した結果だ。提携店がオーマイグラスで販売したメガネをアフターケアした場合、なんらかの金銭的なやりとりがあるかいえば、それはない。
「提携店舗はレンズの収益をお客さまから直接得ています。ネットでは遠近両用の処方が難しいこともあり、遠近両用の高いレンズを提携店舗で選ばれるお客さまが多いです」
清川氏は続けてこのようにも語る。
「既存のメガネ屋さんにとっては、アフターケアをきっかけにお客さまが通ってくれるようになれば、ケア用品の購入や、単価の高いレンズ交換をしてもらえるチャンスも生まれるかもしれない。このように考えればネット店舗、リアル店舗、どちらにとっても悪い話じゃないわけです」
この話は、オーマイグラスが鯖江産のメガネにこだわるところともおおいに関係している。同社には、「地域産業を活性化したい」という強い想いがある。地域産業が衰退の一途をたどるなか、鯖江では、高品質なメガネを作る職人がいるのに、廃業を余儀なくされるケースは後を絶たない。しかし、同社が介入し、鯖江産のメガネの生産が増えたことで、少しずつだが、現地の雇用にも結びついてきている。
つまり、オーマイグラスは、自分たちのネットショップも、提携しているリアル店舗も、メガネを作る職人も自社のビジネスに関わるすべての人をWinにしたいという想いがあるのだ。
オーマイグラスにとって、O2Oは、これまでのメガネ業界の常識とされる既成概念を取り払うツールにもなった。この3月にはオリジナルメガネの販売も開始し、今後は提携店でも販売する計画も進んでいる。さらに、「秋には、O2Oのさらなる仕掛け作りを提案していきたい」と話す清川氏。その挑戦に注目したい。
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3回に分けてお伝えしてきた020。「オンラインからオフライン」が、ネット上からクーポンを配って実店舗に誘導するような単純な仕掛けではないことが分かるだろう。
第1、2回でお伝えした@cosme(アットコスメ)を運営するアイスタイルのように、自社で蓄積した口コミデータや商品データを、オンラインとオフラインを連動させながら商品を最大限にアピールしていく方法もあれば、今回、お伝えしたオーマイグラスのように、実店舗を持たずとも、提携店と連携することで濃密な020を実践していく方法もある。
どちらの場合も共通しているのは、「020をするために何をするのか」を考えるのではなく、「お客さまのために、何をすれば喜ばれるか」を考えて、それを具体的な形で表していることだ。つまり、「020」という目新しいキーワードに安易に踊らされることなく、「お客さまのため」を、毎日、サイトを運営する中で地道にコツコツと実践している企業が、結果として、オンラインとオフラインの融合・発展=020の実践につながっているのである。