9月13日、Amazon Web Services(以下、AWS)はクラウドストレージにフォーカスしたカンファレンス「AWS Cloud Storage Day」を開催した。エンタープライズユーザーからも注目を集めるようになったクラウドストレージサービスだが、今回のカンファレンスでは既にAWSのストレージサービスを活用しているユーザーの生の声などが紹介され、全体像を俯瞰するような講演が行なわれた。
“ストレージの管理”ではなく、“データの管理”を
午前の最初の基調講演に登壇した米AWSのシニアマネージャー グローバルストレージデベロップメントのジョー・ライオンズ氏は、クラウドストレージの基本的な知識からAWSが提供するストレージサービスの概要とその優位点まで、包括的な概説を行なった。
同氏はまずクラウドの特徴として「初期投資不要」「より安価なITトータルコスト」「需要予測が不要」「イノベーションの増大」「付加価値を生まない『重労働』の削除」の5点を挙げた。最後の『重労働の排除』とは、ITインフラの維持管理に要する負担のことを指している。同氏は従来型のストレージ管理を「付加価値を生みださない重労働」だと位置づけ、ユーザーが本来取り組むべきなのは「データ管理、およびビジネス上の付加価値の創出」だと指摘した。つまり、「大事なのは“データの管理”なのだが、現実にはデータではなく“ストレージの管理”に多大な時間を費やしてしまっている」ということだ。クラウドストレージサービスを活用することでユーザーはストレージインフラの運用管理作業から解放され、本来の目的に注力できるようになる。これが、クラウドストレージを活用する大きなメリットである。
次いで同氏は、AWSが提供するクラウドストレージの概要を紹介した。現在のAWS Storageサービス群には、大きく「Amazon S3」「Amazon Glacier」「Amazon EBS」「AWS Storage Gateway」の4種のサービスがある。S3(Simple Storage Service)は「インターネットスケールのストレージ」、Glacierは「アーカイブ、バックアップ用のストレージ」、EBSは「ブロックストレージ」、Storage Gatewayは「オンプレミスとAWSストレージを接続」という具合に、それぞれ特徴や用途が明確に分けられている。
特にGlacierはS3と同等の耐久性を持つように設計されている一方、運用コストはS3の10%程度と大幅な低コストを達成している。トレードオフはデータの取り出しに要する時間で、3~5時間程度とされている。このため、日々更新するようなデータの保存には向かないが、長期保存を義務づけられたデータなど、アーカイブ用途には最適なストレージとなる。
このように、性格の異なる様々なストレージサービスが並列的に提供されている点が、AWSのストレージサービスの強みとなっているといえるだろう。また、同氏が協調したのが「ハイボリューム/ローマージン」という同社のビジネスポリシーだ。日本語では、“薄利多売”と言い換えることができるだろうか。これと毎週のように新機能が追加されるほどの急速な技術革新が同社の競争力の源泉だ。
クラウド型ストレージサービスは急速に認知を拡大しており、それに伴って様々な事業者が参入する激戦区となりつつある。とはいえ、率先して市場を切り拓いた先行者であるAWSは、単に古くからサービス提供を継続しているという点での認知度に留まらず、コストや機能を不断に見直し、日々進化し続けてることで競争力を維持するという姿勢を今後も保ち続けていくようだ。