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カード業界の常識を変えるスクエアの凄味

2013年08月06日 16時45分更新

文● 今村知子(Tomoko Imamura)/アスキークラウド編集部

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8月6日から全国のローソン店舗での発売が始まった、モバイル決済システムSquare(スクエア)。3.25%という手数料の低さや翌日入金ばかりに話題が集まるが、本当の強みは決済の裏で蓄積される利用パターンの徹底分析だ。スマホやタブレットを通した決済はオンライン、オフラインの垣根をなくし、カード業界の勢力図に影響を与える。

 iPhoneやiPad、Android端末に専用リーダーを指してアプリをインストールするだけで、スマホやタブレットをクレジットカード決済端末にしてしまう「Square(スクエア)」。これまでスクエアのウェブサイトとアップルストアのみの取り扱いだったこの専用リーダー(Squareリーダー)が、8月6日より1万を超える全国のローソン店舗でも購入できるようになった。

squareswipe

全国のローソン店舗での販売が始まったスクエア。米国ではウォルマートなどで販売されている。

 Squareリーダーの販売額は980円(税込み)。購入してウェブサイトで手続きをし、銀行口座を指定すると1000円が振り込まれるため実質無料だ。ローソンへの身入りは少ないはずだが、ローソン広報曰く、「ローソン店舗へのお客さまの来店動機につながると考えた」と言う。

 3.25%と安い手数料、指定銀行なら翌日入金というサービスの良さに加えて、全国のローソン店舗でリーダーが販売されるというある意味「常識外」の展開を次々と見せるスクエアという会社の戦略、そして業界に与えるインパクトとは何か?スクエアに出資した三井住友カードの戦略事業部長の野泉和宏氏、20年以上クレジットカードについて取材しているジャーナリストの岩田昭男氏に尋ねた。

斬新さと堅実性を併せ持つのがスクエアの力

 創業からまだ4年のスクエア社へ提携のみならず出資を決定した、三井住友カード。2011年の米国視察の際に「大いにインパクトを感じ」、今回の日本進出のパートナーとなったが、カード会社にとってスクエアの魅力とは何だったのか?

「一番の魅力は、加盟店側にとってお金がかからず便利に使える点ですね」と語る戦略事業部長の野泉和宏氏。「日本では、POSレジや多機能決済端末など、多岐に渡る決済方法に対応する仕組みがあるが、結果的にインフラの負担が大きくなる。その点、Squareはリーダー一つで、それも実質タダ。カード決済できる仕組みをタダで導入できるのは、スモールビジネスのお店にとって非常に魅力的だと感じました」

 しかし、昨年あたりからはPayPal Here、Coineyなど同様のサービスが日本でも始まりつつあったはずだ。スクエア社は何が違うのか?

「米国でも同じようなサービスを提供する会社がいくつも出てきたけれど、スクエアのように売上高1兆5000億円規模で残っている会社はほかにない。結局、米国ではスクエアの一人勝ちなんです。彼らのサービス提供のレンジが非常に広いからでしょう」

 野泉氏は他サービスとの違いとして、カード決済以外の使い勝手の良さを大きく評価する。「現金管理や顧客分析ツールなど、一つ入れるだけでトータルに管理ができる。決済は当たり前として、現金管理や顧客分析を含めたサービスのレベルが違うんです」

squareswipe

米国ではスターバックスが導入したことで名を上げたSquare。日本でもカフェなどで利用シーンが広がっている。

 高いサービスレベルは、スクエア社のカルチャー、考え方から生まれているという。「次のスティーブ・ジョブズ」との呼び声が高いジャック・ドーシーCEOへの評価、人気の高さも、アップル同様に優れたカルチャーやブランド力を構築している点にあるようだ。

「ドーシーは日本に対する見識も高いし、単なる北米のスタートアップ企業とは違う、イノベーションと誠実さを併せ持った会社と感じた。カード会社生え抜きの人間とは違った視点でサービスを考える一方で、株主にVISAやJPモルガンを入れるなど、既存の業界実力者たちとの関係にも配慮している」

 ベンチャーでありながら信用第一の金融、カード系ビジネス側も納得する安心感は、徹底した技術の裏付けがあるからでもある。野泉氏は、スクエア社のオフィスで、同社スタッフが100台ぐらいものモニターを見ながら利用実態をリアルタイムにチェックし、不正使用監視やパターンを分析している様子を見て驚いたという。

「どのお店で何の決済がどのくらいの頻度で発生しているか、リアルタイムに視覚的に管理・分析しているから、独自のクーポンやポイントを開発して提供できる。日本の場合、加盟店申請したお店の初回審査には長い時間がかかるけど、スクエアは審査には長い時間はかけず加入の間口を広げる分、少しでも不審な決済があればすぐに察知してカードの利用を止められるように『途上管理』を厳重にしている。

 日本でのサービスが始まって1週間で、もうデータベースに日本におけるカード決済の利用パターンのデータを入れていたと聞きました。日々色々な利用パターンをつかんで検証し、不正利用のチェックを厳しくして加盟店管理の精度を上げ続けている点でも、信頼できる会社だなと思いました」

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