これまでのノートPCの限界を超えた「薄さ」「軽さ」「速さ」を持つUltrabook。これまではTVCMを中心に個人向けへの訴求がメインだったが、昨今は企業での導入も相次いでいるという。自社導入プロジェクトの話も含め、Ultrabookへの意気込みをインテルに聞いた。
仕事の道具としてPCに愛着を持ちたい
業務に利用されるPCは、通常会社から貸与されることが多い。しかし、この企業貸与のPCは必ずしもユーザーの希望通りのメーカーや機種ではない。営業マンなのに重くて、バッテリの持たないPCを持たされたり、デザインや使い勝手に不満を抱えるユーザーは多いはずだ。一方、機種を選定する情報システム部にとってみれば、まずは予算があり、管理や調達といった課題があるため、ユーザーの好きな機種を選ぶわけにはいかない。「仕事の道具としてPCに愛着が持ちたい」というユーザー、「コストや管理面を重視したい」という管理者、双方のニーズを満たすPCが、今までなかったのが実態だった。
しかし、Ultrabookの登場でこの状況は大きく変わりつつある。薄くて、軽いという特徴に加え、モバイルPCにありがちだった性能面の妥協がない。しかもバッテリ駆動時間も長く、なによりカッコイイ。インテルがプロジェクトを強力に推進していることもあり、機種も豊富で、従来のモバイルPCに比べ、価格も概しておさえられている。
インテルでビジネスPCを担当している坂本尊志氏は、「Ultrabookでは、メインマシンとして使って遜色ないパフォーマンスやバッテリの持ちを実現しています。無線LANでフル作業しても6時間くらい持つ機種がほとんどです。これまでのノートPCにあったような制約が取り払われているので、時と場所を選ばず、自由にお仕事してもらいたいです」とアピールする。
また、モバイルで利用されることを前提に、CPUレベルでセキュリティを強化しているのもポイント。坂本氏は、「物理的な盗難や漏えいに対応するアンチセフト・テクノロジーやIDプロテクション・テクノロジーなどをサポートしています。使いやすいハードウェア認証を目指しています」と説明する。
Ultrabook選定の理由は「かっこいい」?
こうしたUltrabookのメリットにいち早く気がつき、1万台を超える規模で導入しているのが、キヤノンマーケティングジャパンだ。「オフィス改革で無線LANやフリーアドレスを導入するのを期に、メインマシンとしてUltrabookを導入しています。会議室を動くのを前提に持ち歩きのしやすさや、復帰の速さなども評価していただいたようです」(坂本氏)とのこと。内勤用と外勤用で2つのSKUを用意しているようだ。
セキュリティ重視で導入した例としては、名古屋市高齢者療養サービス事業団が挙げられるという。従来、紙ベースで患者の情報をやりとりしていたが、これを電子化するのにあたって、端末として選ばれたのがASUSのUltrabook「ASUS ZENBOOK」だという。「職員の方は端末だけではなく、聴診器や血圧計などもいっしょに持たなければならないので、とにかく軽い端末が必要だったようです。また、患者様の個人情報はクラウドにアップされ、端末には保存されない仕様なのですが、印刷のキャッシュなどもあります。そこでセキュリティ重視でアンチセフト・テクノロジーを活用し、万が一の場合にロックできるようにしています」(坂本氏)とのこと。
選定理由として面白いのは、現場の40代の女性職員から「かっこいい!」という意見が多かったという点。坂本氏は「人に見せてうれしい。こんなかっこいい端末で仕事しているというのは重要な要素だと感じました」と語る。
また、日刊ゲンダイの写真部はデルの「XPS 13」を活用しており、撮った写真を現場で加工し、クラウド型のシステムで入稿しているという。「カメラマンの方が撮影しているときは、脚立に立てかけておくそうです。SSD採用ですし、頑丈なことが評価されました」(坂本氏)といった理由で、現場でバリバリ使われているとのことだ。
金融機関がUltrabookを推奨するというユニークな事例も現われている。常陽銀行は法人向けのインターネットバンク「JWEBOFFICE」の推奨PCとして、3年間の無償ピックアップ修理と24時間365日の電話サポートを付けたマウスコンピューターのUltrabookを提供している。これにより、電子記録債権「でんさい」のサービス開始を見越して、ネットバンク未導入の法人顧客を開拓するという取り組みを進めるという。
坂本氏は、「営業マン用に300名規模で導入するという事例を想定していたのに、いきなり1万人規模の全社導入だったり、金融機関に推奨されたり、いい誤算が生まれています」と、ユーザーの使い方の拡がりに驚いている。
インテルもグローバルで3万台を導入予定
インテル自身もUltrabookの導入を進めている。インテル 情報システム部の邱天意氏は、「インテルは3年でPCをリプレースしていますが、今年からグローバルで3万台くらいリプレースする予定です。インテルの日本法人も年初から営業の半分くらいで、Ultrabookを導入します」という。現状では、コンシューマー向けと企業向けの製品を導入するが、「USBやRBGなどのポートや無線LANのアンテナの強さなどが異なるので、企業向けのUltrabookのほうが最適と考えています」と述べる。今後はWindows 8導入とともに、生産性向上を実現する方策を考えていくという。
邱氏は、「ITから見ると、バッテリが持つこと、管理性が高いことが重要。弊社も2010年からスマートフォンのBYODをやってきましたが、やはりビジネスPCじゃないとできないことは多いです。Ultrabookはバッテリや管理性に加え、開いてすぐ使えるので、既存のPCの弱点をカバーしていると考えます」と語る。スマートフォンやタブレットが普及している昨今、改めて企業でのUltrabookのメリットを考え直す必要があるようだ。