iPhone/iPadのアクセサリーは家庭内へ、ワイヤレス化へ
さて、肝心のイベントの中身ですが……。お世辞にも興奮するような、これはスゴイ! といったものに巡り会えたわけではありませんでした。iPadを搭載し、ビデオ会議に対応する直立走行可能な遠隔ロボット、Double Roboticsの「Wheels for your iPad」がこちらに迫ってきたときにはさすがに驚かされましたが、これも、後に紹介するトレンドの延長線上なのでしょう。
ただ、iPhone以上にiPadが生活の中に広く進出している点、あるいは進出をサポートするアクセサリが増えている点を実感できたことは収穫でした。例えば、iPadが立てかけられるまな板は、iPadをみずから守るビニールカバー付きで、キッチンでiPadのレシピを見ながら料理をすることを前提に考えられていることがよく分かります。
そんな中で1つのトレンドとして感じ取ることができたのは、ワイヤレスホームネットワークとクラウドをうまく活用するアイディアが顕著であった点です。
プリンターのワイヤレス印刷(AirPrint)は既に実現されていましたが、スキャンデータをワイヤレスでiPhoneやiPadに取り込む仕掛けをScanSnapのブースではアピールしていました。また、ワイヤレス接続ができるHDDや、HDDをワイヤレス化するモジュールなども盛んに出展されており、ビジネス向けだけでなく、家庭内でモバイルデバイスに入りきらないコンテンツをワイヤレス経由で視聴するという方法の提案が始まっています。
基本的に専用アプリを利用してワイヤレス経由のデータを受信するため、デバイス+アプリで製品を提供しなければなりませんが、そのおかげで難しい説明書で理解してもらう必要がなくなり、アプリのガイドに沿ってすぐに便利さを体験してもらえるようになる点はプラスの要素と見て良いでしょう。
しかしMac/PCの世界では、より自由に周辺機器やアプリケーションを開発することができる環境が拡がっています。ホームネットワークを活用したり、ワイヤレスで様々なモノをコントロールするなんて、なにを今さらと一方では感じてしまうのも確かです。しかしiPhoneやiPadだからこそ、そうしたワイヤレスな生活を取り入れるきっかけを作っていると見ることもできます。
ASCII.jpで日々最新に触れる読者の皆様が考える以上に、AppleやGoogleのお膝元である米国・サンフランシスコでも、テクノロジーの拡がりはゆっくりとしたペースを保っているように感じます。新しいアイディアを1歩遅れた現在にいかにフィットさせるか、というテクニックもまた、大切なのでしょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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