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山谷剛史の「アジアIT小話」 第37回

ネットから民主化が進んだ!? 2012年の中国IT事情を振り返る

2012年12月25日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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Google Playが利用できなくても支障なし!?

 中国からYouTubeにアクセスできない代わりに、「優酷(Youku)」や「土豆(Tudou)」といった動画サイトが台頭した(その優酷と土豆は3月に合併を突然発表し、驚かせた)。中国からTwitterが利用できない代わりに微博が台頭した。百度の台頭にGoogleは中国本土から撤退し、香港にサーバーを設けた。

 そして今年はGoogle Playすらもアクセスできなくなった。もともと中国のAndroidスマートフォンにはGoogle Playがプリインストールされていない製品が多かったが、さらに一段階進んだ感じだ。中国のユーザーの口コミ力により、中国ユーザー好みにアレンジされた「91手机助手」「聯想(レノボ)楽商店」といったアプリダウンロードサイトが普及したためか、Google Playにアクセスできなくなっても、ヘビーユーザーのみが騒ぐだけだったが。

 TwitterやFacebookはそもそも友人が利用していないと面白くないという仕様から、中国人利用者が極端に少ない両サイトは利用されていないし、認知度は減少している。

 だがGoogle Playに関してはそこまで今後中国で無名になるとは思えない。香港や海外向けに中国未発売の人気機種がリリースされていたり、中国本土での販売価格よりもずっと安かったりすると、「水貨」と呼ばれるスマートフォンが密輸(税関を通さずに個人輸入)されるのだ。

レノボの楽Phone

レノボの「楽Phone」

 聯想(レノボ)楽商店は、もともとはAndroidを改造した「楽OS」というOS搭載の「楽Phone」というスマートフォン向けのアプリダウンロードサイトである。楽Phoneの新機種は今年も継続的にリリースされ、しかも携帯キャリアと提携している機種が多く、それらは無料で入手できた。

 “中国独自”の規格は中国人にも嫌がられているが、それでも(同じくキャリア提携で無料でスマートフォンを提供する)ファーウェイやZTEと並んで販売台数を伸ばした。

阿里雲OS搭載のスマートフォン

阿里雲OS搭載のスマートフォン

 今年は淘宝網(TAOBAO)のアリババグループ(阿里巴巴)による「阿里雲OS」というAndroidを改造したOS搭載のスマートフォンが登場したが、こちらはあまり売れず。中国地場メーカーが同OS搭載スマートフォンをリリースした後、ACERも同OS搭載スマートフォンをリリースしようとしていた。

 しかし、「OHAメンバーのAcerがAndroid非互換のスマートフォンを出してはならない」とGoogleが発売に反対し、スマートフォンは発売延期となった。結局、阿里雲OS搭載スマートフォンについては、現状中国地場メーカーが中国国内だけで販売するという状況となっている。

AndroidセットトップボックスはNG?

小米盒子

小米(Xiaomi)の「小米盒子」

 中小携帯電話メーカー数社が、1.5GHzのデュアルコアCPUを搭載しながら値段の安いハイコストパフォーマンススマートフォンをリリースし注目を浴びた。その代表格「小米手机」というスマートフォンをリリースしたメーカー「小米(Xiaomi)」は、居間のテレビにスマートフォンの環境を持って行くべく、スマートフォンと親和性の高い低価格なセットトップボックス「小米盒子」をリリース。

 テスト的に出荷した後「動画サイトの動画も見られるという仕様がルール違反。配信できるのは、テレビ向けに配信を許可している動画配信サイトのみ」だと、中国政府当局に指摘され発売を延期した。これも大きな話題になった。

 かくして中国国内外のニュースサイトが年末振り返り記事を出す中で「中国は2012年、ますます欧米の世界標準ではなく、独自路線を進んだ」との評をよく目にしたのである。

最後に宣伝的ではありますが……

 というわけで、2012年の中国ネット事情について簡単にまとめてみたが、筆者はこの12月に1年間の中国インターネット市場とモバイル市場をまとめた「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D、Kindle版1600円)という書籍を出した。Kindle版1600円のほか、Amazon.co.jpのオンデマンド出版の仕組みを使ったオンデマンドプリンティングで紙の書籍(2520円)でも提供されている。

 この本では年間の中国のネット・モバイルニュースをジャンル毎に見やすくわけ、さらに反日デモやスマートフォンの普及など大きな事象については長くしっかり紹介している。

 中国のネット変化の速度が未だ変わらず、筆者自身も今年の上半期のことはかなり昔に思える中、中国のネット市場の今を感じることができる本になっていると思う。この年末年始、中国をより詳しく知りたいという方はぜひ手にとってみてほしい。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。

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