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山谷剛史の「アジアIT小話」 第37回

ネットから民主化が進んだ!? 2012年の中国IT事情を振り返る

2012年12月25日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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 2012年も中国のIT市場は、外国のサービスを模倣した中国サイトが独自の発展をしていった。だが、ますますネット規制を強めた、とも感じた1年でもあった。つまるところグローバルスタンダードではなく、中国色が強まった、そんな1年に感じた。

反日デモに「日本人は中国の内乱で喜んでるだけだぞ」という呼びかけ

反日デモに対して「日本人は中国の内乱で喜んでるだけだぞ」という呼びかけ

 政府機関が注視するネット世論についての最新レポートによれば、2012年に最もネットで話題となったトピックは「尖閣諸島と反日デモ関係」だった(中国社会科学院発表「2012年互聯網輿情分析報告」)。書き込まれた数は2位のロンドンオリンピックと比べても、ダブルスコアと注目されている様子がわかる。

ネットで話題となった鳥坎の抗議行動

ネットで話題となった鳥坎の抗議行動

 反日デモとは別に、「烏坎事件(広東省)」と「モリブデン銅精錬工場建設反対デモ(四川省)」といった、地元政府に対して起こした大規模な民主化要求デモがランクインしていることが興味深い。

 この事件については、具体的には検索すればいろいろ出てくるので説明は省くが、こうした「政府からNG認定され、書き込みが消されかねないニュース」が注目され、書き込む人がかなりいるのだ。

民主化の書き込みは即消される、ということがなくなった?

ネットで話題のトピック。左が話題のトピック、上が各掲示板・SNSサイト名

ネットで話題のトピック。左が話題のトピック、上が各掲示板・SNSサイト名

 遠方の小さな村の民主化デモには我れ関せず、という人が多数派ではあるが、その一方で民主化に興味を持ち、書き込む人がいるわけだ(絶対数としては反日デモに興味を持つ人の数%程度にすぎないが)。

 これだけ書き込み数が多いとなれば、「中国で民主化の話題を書いたら書き込みが消される」と言われたのはもはや昔。影響力の高いアルファブロガー的な人が書き込むと、とある方面から圧力がかかるという話は聞くが、過激な表現を控えて、一般人が足並みそろえて書くようであれば大丈夫という風潮になってきたと言える。

 一定数が書き込むということは、今後中国各地の反対デモを認知する人は、たまたまみた書き込みやリアルでの口コミを通じて増えていくことを意味するだろう。

モバイル機器の普及で勢いを伸ばすマイクロブログ

 レポートでは、今年のホットトピックの傾向として「民主化系の話題」「ネットでの腐敗叩きが娯楽へ転化」「国際的話題の注目が上昇」「美しすぎる~がネタにあがりがち」と分析している。

 今年は「SNSなどでのネット論壇において、モバイル利用が浸透し、またより若い90年代生まれの世代が利用しはじめた」と分析していて、そこは筆者も同意するところ。去年はスマートフォンが普及したが、3Gの料金プランがネックで2G利用者がほとんどだった。

 今年は3Gが普及しはじめたが、来年はより手頃なデータ通信プランがキャリア競争の中で提供され、また日本ではモバイルルーターが普及することが予想される。つまりはスマートフォンを通して現場の写真や動画をアップできる人が増え、マイクロブログ「微博」につぶやく人は増えるだろう。

 スマートフォンと3Gの普及により、日本でヒットしている「LINE」のようなコミュニケーションツールがヒットし始めている。数社からリリースされているが、中国におけるサービスは騰訊(Tencent)社の「微信(WeChat)」が最も人気で2億人超が利用している。

 最近ではLINEが奇虎360という新興ベンダーと提携し、中国市場に参入した(SkypeやWindows Live Messengerも中国企業が運営している。そのためWLMも中国だけは残すこととなった)。現在のところ、中国でまんべんなくヒットしている、というわけではなく、LINE的な機能の性格から、たとえば「ある田舎街若者グループ間でほぼ全員使っているけれど、都会ある地域・ある若者グループ間で誰も使っていない」といった状況が起きているという、まさに現在進行形で普及している状況だ。

 この手のコミュニケーションツールも来年はネット世論の構築に一役買うのでは、とレポートでは分析している。すでに一部の政府機関では、マイクロブログ「微博」を利用し情報発信していく「微博問政」の微信版をはじめている。中国版Skypeのように微信や中国版LINEに、ちょっとした細工がされるかもしれない(関連記事1関連記事2関連記事3)。

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