今回は半年振りに、インテルチップセットのロードマップアップデートをお届けしよう。とはいっても、半年前の連載152回からはあまり大きな変更はない。
Intel Q77の機能は、
実はZ77で実装されていた
2012年6月、ビジネス向けとなる「Intel Q77」チップセットと、このサブセットである「Intel Q75」チップセットの2つが発売された。
Q77はCPU側のPCI Expressレーンのサポートが「x16」のみ(x8+x8のデュアルGPUはサポートしない)とされた一方で、PCIバスが追加されている。実のところ、先に登場した「Intel Z77」にもPCIは搭載されており、それが無効化されていたというのが正確だ。Q77はこれを有効にしたわけだ。
またセキュリティー機能の「vPro」や、セキュリティーや運用管理を支援する機能「Intel Small Business Advantage」なども有効になっているが、これもQ77で新たに追加されたわけでなく、すでにZ77に搭載されていたものの無効化されて機能を、有効化したにすぎない。
Q77/75の機能は、一般コンシューマーにはほとんど無関係であるが、唯一関係しそうなのは仮想化支援機能「VT-d」(Virtualization Technology for Directed I/O)のサポート。これはOS上で仮想マシンを動かすときに、I/Oの仮想化アクセラレーターを有効にする機能であるが、Z77では無効になっているこの機能が、Q77では有効になっている。VT-dは仮想化システム「Hyper-V」などを使って、仮想OSを使うときの性能に大きく影響する。こうした使い方をするユーザーはそう多くはないだろうとは思うが、仮想化環境を必要とするユーザーには、Qシリーズは非常にいい選択肢である。
Q75はQ77のサブセットで、SATA 6Gbpsのポートがひとつ減らされたり、SSDキャッシュを使ってHDDを高速化する機能「Intel SRT」(Smart Response Technology)が省かれたりといった違いがある。また、vProや管理機能「AMT」(Active Management Technology)、VT-dといった、Q77で有効化された機能がほとんど無効化されている。つまり「Intel H77」のさらに下位、といった位置づけになる。
そんな製品が「Intel H75」ではなくQ75になったのは、インテルがビジネスPC向けに行なっている「SIPP」(Stable Image Platform Program)という取り組みでサポートされているという、ただ一点と言ってもいいだろう。SIPPはインテルが2003年頃から行なっている取り組みで、ビジネス用途に安定したドライバー類をまとめて提供し、これの長期サポートを保障するというものである。
ちなみに152回の記事では、「ひょっとするとH71の可能性はまだあるかも」と説明したが、結局出ないまま終わってしまった。昨今の状況を考えれると、H71を出す意味はほとんどなかっただろう。
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