東京で考えたことその1
日本は結局、iPhoneブーム?
まず、日本のスマートフォン関連の動きが、iPhone中心に動いていること。端末自体のシェアを考えれば、決してそうではないはずなのですが、販売ランキングを見ても、LTE論争を見ていても、基本的にはiPhone 5が話題の中心にあるといっても過言ではなさそうです。他のデバイスが販売ランキングに入り込むまでどれくらいかかるのか、その端末は何なのか、気になるところです。
そして、とっくの昔から「Xi」という名称でLTEサービスを開始していたNTTドコモにスポットが当たりにくくなってしまっている状況を見ると、バズワードは“LTE”だったのではなく、やはり(LTEに対応した)“iPhone 5”が注目されていただけだったのではないか、と思わされます。
これは東京で交わしてきた議論の中で出てきた話ですが、ドコモはこれまで、パケット通信に「iモード」という名前を付け、メールやニュース、ケータイコンテンツを携帯電話から楽しむスタイルを提案しました。3Gでも「FOMA」と名付け、iモードが高速大容量化して画像や動画が楽しめるようになる、というユーザーに分かりやすいメリットを提案しました。
では、ドコモがLTEに「Xi」と名付けたとき、ユーザーにどのような体験を提供するのか、何が新しくなるのか、という点を提案しきれずに、iPhone 5を迎えたのが今じゃないかと思います。
もちろんFOMAも、iモードが高速大容量になって、何が起きるかなんて、使い始めた時はユーザーが体感することもなかったはずです。印象に残っているのは、スタート当初は端末が大きく、電池が持たない、エリアが狭い、といった問題点ばかり。しかし、その後もテレビ電話こそあまり使わなかったのですが、写真付きのケータイメールや動画視聴、ウェブのサービス利用などの快適さを実感することになります。
早く論点をiPhoneからLTEを利用した体験へと転換させなければ、iPhoneへのネットワーク提供役に回っているKDDI、ソフトバンクの優位性を拡大させるだけです。ところが、各キャリアとも、1日や3日間の通信量、あるいは月間の通信量に応じた速度制限が存在しており、ユーザーが思い切り高速回線でデータを使う、というわけにもいきませんよね。
3G回線の品質は日本にも優位性がありましたが、LTEでは米国内でも都市によってはスピードが負けていません。ここからはLTEを使って何をするか、という壮大な大喜利合戦が国際的に始まるわけで、ケータイの経験を持っている日本は、大いにその実力を発揮していきたいところだと思っています。
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