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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第48回

Eコマースによって変わったアメリカの最大の商戦期

2014年12月03日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura

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オークランドのテメスカル地区。デモ隊が暴徒化し、商店のガラスを壊したり、商品を道に投げ出したりした。写真はペンキ店で、周囲の道は真っ白に

感謝祭当日はお店もオープンせず
ひっそりと静まりかえるアメリカ

 この原稿は、米国などの地域で盛んな「感謝祭」(Thanksgiving)に前後して書いています。今年は11月27日(木)が感謝祭当日。そして日曜日までの4日間が連休となります。特に感謝祭当日はスーパーやレストランなどを含めて、街の商店はほとんどが休みで、ひっそりと静まり返ります。

 しかし、そのひっそりとした感謝祭の最中も、米国社会では怒りの行動が繰り広げられています。白人警察官が黒人の少年を誤って射殺した米ミズーリ州ファーガソンの事件で、警察官に不起訴の決定が下ったことをきっかけに抗議デモが全米で展開されました。 筆者の住むバークレーの隣町、オークランドでもデモが激化し、商店のガラスが壊されるなどの大きな騒ぎとなりました。

 26日は終日スーパーマーケットは大混雑で、感謝祭に向けての買い出しになるのです。七面鳥のローストをはじめとして、終日料理をしながら、家族で飲んだり食べたりする恒例行事。ただ、七面鳥はデカすぎて、我が家のオーブンには収まりきらないこと、味も含め、個人的にはチキンのローストの方が良いです。

 その感謝祭の翌日、金曜日がよく言われる“ブラックフライデー”。店舗は0時、または早朝から開店し、年に1度の在庫一掃セールが始まります。あらゆるジャンルのショップがセールをしますが、やはり電化製品のセールには注目が集まります。昨年は55インチのHDテレビが100ドルという価格だった例もあり、そんなに在庫を抱えて困っていたのかと余計な心配をしたくなるほどでした。

 ただ、こうした破格の商品を店舗で手に入れるためには、おそらく感謝祭の日の夕方から並ぶ必要があり、朝になって出かけていっても、お店の中は空っぽに近いような状態になっていることでしょう。だとしたら、七面鳥を食べながら暖かく過ごしていてもよいんじゃないかと思うわけです。

ブラックフライデーの変化とオンライン化

 今年は前述のデモの影響もあって、ちょっと店舗から足が遠のいたように感じていますが、原因はほかにありました。

 IBMが毎年リアルタイムの売り上げデータを解析して発表している分析によると、今年のブラックフライデーは「ブラックノーベンバー(Black November」ともいうべき状況になっていて、感謝祭翌日の1日集中型というよりは、それ以前の11月からセールを行なっているところが増えてきているそうです。

 その原因とも言えるのがオンラインの伸び。2014年のオンラインセールスは昨年よりも14%伸び、華やかなセールイベントを展開するデパートでは、オンラインが24.3%も伸びたそうです。

 前述したとおり、Eコマースなら七面鳥を食べながらショッピングが出来るわけで、小売店としては、感謝祭前からセールを展開して、都合がいいときにセール品を買ってもらう方が売上を伸ばせると判断したのではないでしょうか。インターネットが米国で長年続いてきたカルチャーを変化させようとしている瞬間に立ち会っているような感覚です。

 またIBMは、Eコマースサイトへのトラフィックが、今年初めて50%を超え、52.11%になったと発表しています。ただし、売上額は32.33%にとどまっており、オンラインでの勾配の客単価が2.45%低下しているとも言います。まだまだスマホでは、高額商品を買うという感覚にはなっていないようです。

 アクセスしてくるモバイルデバイスは、iOSが圧勝、というデータも面白い比較です。iOSとAndroidを比較すると、サイトへのトラフィックは倍以上、売り上げに占める割合は4倍近くと、iPhone/iPadユーザーの方がよりたくさんの買い物をしていることがわかりました。


(次ページでは、「普段は値引きしないが、商戦期にはiTunesカードを付けるApple製品」)

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