東京で考えたことその2
スマートとは何か?
東京に帰ってきて楽しみなのは、電車の中の中吊り広告や、街の進化。3ヵ月ごとに新しい建物がオープンし、商業地域の話題ができ、街がまるで編集された季刊誌のように進化していく様子は、サンフランシスコ近辺ではなかなかお目にかかれない光景です。こうした街の中の人の動きや情報の集積から来る混沌さとスピード感は、30年間暮らしていた贔屓目があったとしても、面白いものだと改めて感じています。
そんな中でも少し気になった広告は、地下鉄丸ノ内線で見かけたパナソニックのスマート家電の広告です。
広告には冷蔵庫・洗濯機・エアコンの3種類がどのようにスマートフォンと連携するのかが紹介されていました。例えば冷蔵庫にスマートフォンをタッチすると、開閉回数や電気使用量が分かるというもの。洗濯機の場合は、洗剤を登録して、その特性に合わせた選択をしてくれる、というアイデアです。
そもそも、スマートフォンでタッチできる機能が付いているという時点で、部屋にはじめから設置してある古そうな冷蔵庫や、コインランドリーを使うのが当たり前、という米国暮らしをしていると驚かされるばかりですし、日本でもスマートフォン連携の家電は未来を感じさせてくれるのではないかと思います。
ところがここで、スマートとは何か、ということを考えさせられました。
というのも、スマートフォン対応機能の脇に控えめに書かれている「エコナビ」機能の方が、いちいちスゴイからです。冷蔵庫であれば、光で内容量を計測して勝手に節電してくれたり、常に洗濯物の中身や脱水具合をチェックしながら勝手に洗い方を調節し節水・節電してくれたりする機能の方がむしろ驚かされるのです。
もちろん、電気代を可視化することで意識が高まるという効果があるでしょうし、冷蔵庫の開閉を減らすなど、人の行動の改善もあるでしょう。ただ毎日、場合によっては複数回、忙しなく操作するもので、“勝手に”やってくれる方がよほど賢い、スマートなんじゃないかと思わされます。
確かに、常に新しい魅力を打ち出し続けなければ消費者に対しての訴求や他社との競争がしにくくなっていく、という視点も分かります。ただ、性能競争をするとしても、人が何を求めているのか、そもそも本当に使われるのかどうか、という視点から「何がスゴイのか」を語った方がより魅力的に感じられるのではないか、と思うのです。
そういう意味では、スマートフォンもまだまだですよね。ユーザーが、ソフトウエアのメンテナンスをしたり、立ち上がっているアプリを落としたり、調子が悪くなったらケータイショップやApple Storeに持ち込むなど、だいぶ面倒を見てあげているわけですから。

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