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インターネットの重層構造を垣間見る

エクイニクス、「ジャパンピアリングフォーラム2012」を開催

2012年09月20日 08時00分更新

文● 渡邉利和

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9月19日、エクイニクス・ジャパンは東京都内で「ジャパンピアリングフォーラム2012」を開催した。自社のサービスの紹介の場でもあるが、集まった顧客企業間の交流/関係構築の場としての意味合いが強く、インターネットを成立させているのは今もなお各ネットワーク事業者間の相互接続であるという点を再確認できる場でもあった。

事業者間でのピアリングの意義

 漠然としたイメージでは、“インターネット”という確固とした実体があり、そこに接続しさえすれば世界中あらゆる場所と通信できるようになる、というのが一般ユーザーの認識ではないかと思われるが、ネットワーク事業者から見ればその姿はまったく異なるものとなってくる。インターネットは複数のネットワークが互いに相互接続することで成立しており、どこと接続するかによって接続に要するコストが変わったり、通信速度が変化したりする。ISP等がインターネットとの接続性を確保するために公的に利用できる場として用意されているのがIX(Internet eXchange)だが、それ以外にも広帯域な接続回線を持つネットワーク事業者に有料で接続して「トラフィックを購入する」トランジットと呼ばれる接続や、事業者間を直接接続するピアリングなど、さまざまな手段が併用されてインターネット接続が成り立っている。

 エクイニクスは世界でも有数の大規模なデータセンター事業者であり、900社を超えるISPや1000社以上のコンテンツプロバイダーやクラウド事業者を全世界100カ所以上のデータセンターに収容している。利用者から見れば、エクイニクスのデータセンターはさまざまなネットワーク回線/さまざまなコンテンツが集まる“市場”であり、そこに参加することで自社が必要とするさまざまな“ネットワーク”が手に入るユニークな“エコシステム”ができあがっている。

エクイニクスのアジア太平洋地域のネットワークエンジニアリング&オペレーションズ担当ディレクター ラファエル・ホー氏

 ピアリングは、当事者間の合意によって成立するのが基本であるため、関係者が集まって合意形成が可能なコミュニティが成立し、かつ実際に接続を行なうための機器設置などができる物理的な設備の両方が必要であり、これをエクイニクスが提供している、ということになる。ジャパンピアリングフォーラムはまさにコミュニケーションの場であり、国内の“ネットワークのプロ”が集まる場となっている。

 イベントに先だってインタビューに応じてくれた同社のアジア太平洋地域のネットワークエンジニアリング&オペレーションズ担当ディレクターのラファエル・ホー氏は同社を介したピアリングの意義について、「キャリアニュートラルであり、さまざまなネットワークを横並びで比較検討できる場ともなっている」「多数のコンテンツプロバイダやクラウド事業者が参加しており、こうした接続先と直接接続することで高速/低遅延でサービスの利用が可能になる」といったメリットを挙げた。また、コスト面ではトランジットが帯域幅(Mbps)単位の課金なのに対し、ピアリングはポート単位の課金となるので、トラフィックが多い場合にはピアリングはコスト削減にも繋がるという。

注目を集めるSDNに関する討論も

 イベントでは、USTREAMやAmazon AWSといった同社に接続されるユーザー企業が講演を行ない、参加者にピアリングを呼びかける場面もあった。こうした国際的にも有力な事業者と直接接続できる機会が得られるという点も、同社を利用する大きなメリットと言えるだろう。

米USTREAMのArpad Kun氏の講演で紹介されたピアリングとトランジットのコスト比較。さらにレイテンシなどのさまざまな要素を加味して接続手段を選択することになる。

 また、イベントの最後に行なわれたパネルディスカッションは現在注目を集めるSDN(Software-Defined Network)がテーマで、NTTコミュニケーションズのネットワークサービス部 担当部長の福田 健平氏が司会を務め、パネリストはストラトスフィアの代表取締役社長の浅羽 登志也氏、ミドクラジャパンの代表取締役の加藤 隆哉氏、ヴイエムウェア(旧ニシラ・ジャパン)のシニア・システムズエンジニアの進藤 資訓氏の3氏が参加した。いずれもオーバーレイ型ネットワーク仮想化を推進する代表的な企業の代表者であり、一方で司会者はネットワーク仮想化を利用するユーザーの立場となりうる大規模ネットワーク事業者とあって、おざなりなプレゼンテーションに留まらない踏み込んだやりとりが行なわれた。

SDNをテーマとしたパネルディスカッションに参加した3名のパネリスト

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