実はDVDを再生できないWindows 8
「ええっ!」と驚かれそうな話ではあるが、Windows 8はそのものでは、DVDビデオを再生することができない。Windows 8搭載PCでDVDを見たければ、サードパーティーのDVD再生ソフトが必要になる。なぜそんなことになっているのか? それを説明するには、これまでのWindowsのDVD再生について説明しなくてはなるまい。
Windows 7/Vistaでは、DVDの再生は標準で可能だ。DVD再生に必要な「DVDコーデック」というモジュールが標準で付属していたからだ(図1)。
DVDコーデックとは、DVDのディスクを読み取って暗号化(CSS)を解除し、MPEG-2形式のデータを動画として再生するソフトウェアだ。暗号化解除には専用のキーが必要で、これを正式に取得するためには、DVD CCA(Copy Control Association)から有料のライセンスを受ける必要がある。そのためDVDの再生機能を、無料で提供することはできない。ではどうしていたのかというと、マイクロソフトがライセンス料を支払っていた。つまりWindows 7/Vistaの価格には、DVDコーデックのコストが含まれていたわけだ。
なおWindows 7やVistaでも、すべてのエディションでDVDコーデックが含まれていたわけではない。Starterのような下位エディションや、ビジネス向けのエディションには入っていなかった。ただしPCメーカー向けには、DVDコーデックを含んだライセンスがあり、下位エディションでもDVD再生ができたプレインストールPCも存在するという。
一方Windows XPでは、標準ではDVDコーデックは含まれていなかった。DVDを再生するにはサードパーティーのDVD再生ソフトが必要で、DVD再生ソフトの中にDVDコーデックが含まれていたため、Windows Media Playerでもそれを使ってDVD再生が可能だった。
そしてWindows 8では、このDVDコーデックが付属しなくなる。Windows 8の製品版をPCに新規インストールしても、そのままではDVDを再生できない。XP時代と同様に、サードパーティーのDVD再生ソフトが必要になる。ただし、Windows 8がプレインストールされたパソコンの場合には、少し話が違ってくる。PCメーカーはWindows 8搭載PCに、なんらかのDVD再生ソフトをプレインストールできるからだ。
そうは言っても、実際どうなるかはPCメーカー次第である。例えばUltrabookなどには、光学ドライブが内蔵されていない。こうしたマシンでは、DVD再生ソフトが付属する可能性は低くなるだろう。DVDやBDドライブを内蔵するデスクトップPCやノートPCでは、サードパーティー製DVD再生ソフトが含まれる可能性は高いだろう。
マイクロソフトはDVDドライブやBDドライブのPCへの標準搭載率が、今後落ちていくと判断している。ソフトウェアのオンライン配布やUSBメモリーの大容量・低価格化により、インストールメディアとしての光ディスクの必要性が低下していること。タブレットや薄型PCなど、光学ドライブを搭載できないPCも増えつつあること。動画のソースとしてオンラインが急速に伸びていて、光学ドライブからの再生が減ってきているといった理由があるためだ。
米国でのある調査によれば、2012年中に米国内では、オンラインムービーの利用量は物理メディアでのそれを上回るという。BDも当初期待されていたより、PCでの利用は少ないらしい。今後も光学ドライブの装着率は上がらないとみるならば、DVDコーデックのためにコストをかけることは、得策ではない、とマイクロソフトは判断したようだ。

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