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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第27回

「ラストエグザイル‐銀翼のファム‐」千明孝一監督が語る、制作現場の壮絶な戦い

「GONZOブランド」を背負って立つアニメ監督の決意【前編】

2012年07月08日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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(C)2011 GONZO / ファムパートナーズ

 アニメ作りは共同作業だ。現場にはとにかく人が多い。プロデューサー、脚本、演出、アニメーター、音声、etc……その制作チームの中心に立ち、陣頭指揮をとるのが監督だ。その仕事は決して一筋縄でいくものではない。特に、会社のブランドを背負って立つような作品を手がけるとあれば、その難しさ、プレッシャーは私たちには想像もつかない。

 今回お話を伺ったのは、「ラストエグザイル‐銀翼のファム‐」の千明孝一(ちぎら・こういち)監督だ。アニメスタジオ・GONZOが全力を投じた代表作「LAST EXILE」(2003年)の続編として作られたこのアニメ。制作の舞台裏には、現場に様々な難題をかかえながらも“プロの仕事”に挑みつづける、監督としての壮絶な戦いがあった。


プロフィール――千明孝一監督

 1959年生まれ。神奈川県出身。1979年にアニメーターとしてタツノコアニメ技術研究所に入所。劇場アニメ「ヴイナス戦記」(89年)で初演出後、マッドハウスOVA作品の監督経て、「青の6号」(98年)よりGONZOを拠点に活動。主な監督作品に、劇場アニメ「ブレイブ ストーリー」。TVアニメ「ゲートキーパーズ」「フルメタル・パニック!」「LAST EXILE」「ドルアーガの塔 ~the Aegis of URUK~」など。

ラストエグザイル-銀翼のファム- あらすじ

 空族の少女ファムとジゼルは、聖なる湖グラン・レイク上空で、アデス連邦とトゥラン王国との艦隊戦を目撃する。 和平会議のはずが、アデス連邦は一方的にトゥラン艦隊を攻撃。危機に瀕したトゥラン旗艦ラサスに、リリアーナとミリア、2人の王女の姿を見とめたファムは、戦場からラサスの奪取=王女の救出を決意する。

公式Webサイト

http://www.lastexile-fam.com/

黄金時代への挑戦

―― 「ラストエグザイル‐銀翼のファム‐」(以下「ファム」)は、アニメスタジオGONZOで千明監督が作られた「LAST EXILE」の続編ですね。GONZOらしい3Dデジタルを駆使した壮大なスケールの物語でしたが、今回この作品を制作するにあたっての目標や思いにはどんなものがありましたか。

千明 目標は、2003年に作った「LAST EXILE」の続編を“今のGONZO”で、前作以上のクオリティーに作り上げることでした。


―― “今のGONZO”で、とはどんな意味を持つのでしょうか。

千明 実は、GONZOという会社は、2003年当時と今とでは、会社の規模やスタッフなどが大きく変わってしまっていて、“かつてのGONZO”のような作品を作るハードルは、かなり高いと思っていました。

 GONZOの初期の代表作に「青の6号」(1998年)という作品があったんですが、僕もスタッフとして参加したこの作品には特別な思い入れがあって、「青の6号」のようなスタッフワークを目指したいと思ったんです。

千明孝一監督(53)


―― 「青の6号」は、アニメ業界でも初のフルデジタル作品として大きく話題になりました。千明監督は「青の6号」のスタッフとして、どんなことを経験されたのですか。

千明 僕にとっては、デジタルアニメーションに触れるきっかけになった大切な作品です。当時、僕はフリーランスで演出をやっていたんですが、「青の6号」で頼まれたのが、他の方が描いた絵コンテを演出するという役割だったんですね。僕はコンテと演出は両方自分でやりたいと思っていたので、仕事を引き受けるかどうかかなり悩みました。

 でも、GONZOの制作・中島伸治さんの「これからはデジタルです。 アニメの現場は変わります」という言葉に気持ちが動かされまして、前田真宏監督の下で演出をやらせていただきました。フリーランスから、GONZOの社内スタッフとして籍を置くようになったのもこのときからです。

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