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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第140回

GPU黒歴史 不出来なドライバーで波に乗れず Ticket to Ride 4

2012年02月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 今回のGPU黒歴史は、Number Nine社の「Ticket to Ride 4」(T2R4)をご紹介したい。

高性能グラフィックスカードで
PC市場に参入したNumber Nine

 Number Nine、正確に言えばNumber Nine Visual Technologyという会社は、1982年に設立された。ほかのグラフィックチップベンダーと異なり、同社はマサチューセッツ州レキシントンに本拠地を置いた。マサチューセッツ州といえば、有名なマサチューセッツ工科大(MIT)があり、同社のほかにもDECやSymbolicsとか、1960~1970年代に活躍したメーカーが多く存在した土地である。創業した企業の数という意味では、1960年代から急速にシリコンバレーに偏るようになってきたが、存在する企業数という意味では、シリコンバレーに並んで影響力があった土地だ。

 そのレキシントンで、まずはNumber Nine Computerという社名で創業し、Apple II向けのグラフィックスカードなどを作っていたのが、同社のルーツである。PC市場への参入も1983年と比較的古く、最初は「Number Nine Graphics System」という大仰な名前のCGA互換グラフィックスカードをリリースする。

 それに続いて同社は、「Revolution 512/1024/2048」という高解像度表示が可能なグラフィックスカードを投入する。このうちRevolution 2048は、16色カラーながら2048×1024ドットの表示が可能というもので、専用ディスプレーとセットでCADなどの業務用システムに多く採用された。またNumber Nineは早くからIBMとライセンス契約を結び、MCAバス対応製品を投入した。最初のシリーズは「Pepper」と呼ばれるもので、テキサス・インスツルメンツ(TI)のグラフィックスコントローラー「TMS34010」と、それに加えてインテル製のグラフィックスコントローラー「Intel 82786」まで搭載した製品まであった。

 ちょっと脇道に逸れるが、TIのTMS34010とは、世界初の「PGC」(Programmable Graphics Controller)である。グラフィックスコントローラーそのものは、それ以前からさまざまなメーカーがさまざまな製品をリリースしている。例えば日本だと、「PC-9801」に搭載されたことで有名なNEC「μPD7220」が、1981年にリリースされている。もう少し原始的な「CRTC」(CRTコントローラー)レベルで言うならば、Apple IIやIBMのMDA/CGAカードに搭載されたモトローラの「MC6845」などが、1970年代から発売されている。だが、これらはいずれも固定機能のグラフィックアクセラレーターに過ぎない。一方のTMS34010は、プログラミングによって描画機能を制御できる点でまったく異なっていた。

 TIはこのTMS34010を、PC市場向け販売することを計画。1990~1991年にかけて、「TIGA Star」(TMS34010搭載)と「TIGA Diamond」(後継のTMS34020を搭載)といったグラフィックスカードを、業務用途向けに販売した。「TIGA」とは「Texas Instruments Graphics Architecture」の略である。ちなみに、このTIGAのブランド力を高めるべく、同社がマーケティングツールとしてリリースしたのが「WinTach」という、これまた古くからのユーザーには懐かしいベンチマークプログラムであった。

「WinTach」の画面。「386DX(20MHz)とVGA」というリファレンス構成のPCと比較して、ワープロ/CAD、DRAW/表計算/ペイントツールがどれだけ高速に動くかを示すベンチマークプログラム。IBMが「PS/V」シリーズの性能を、NECのPC-9821シリーズと比べるという比較広告に使われたことでも有名

 脇道ついでにもうひとつ。Intel 82786は1991年に発表されたグラフィックコプロセッサーである。137回で紹介した「Intel 740」は普通の独立型グラフィックチップであるが、82786はブロック図からもわかるとおり、CPUと並んでボード上に搭載されるような形を前提としたものだ。単体グラフィックチップとして構成するのはちょっと難しい。

Intel 82786のブロック図。これは軍用向けモデルである「Intel M82786」のデータシートから抜粋

 実際アプリケーションノートを見ると、インテルの組み込み向け8bit MCUである「Intel 8051」と組み合わせた例などが出てきており、PC向けとは言いがたい。だが、ウインドウ制御ハードウェアとかポリゴン/直線の高速描画、BitMapなどをサポートし、同時256色表示が可能という能力を備えていた。もっとも、製造プロセスはCMOSになる前のCHMOSという1.5μmプロセス(CHMOS III)で、今から見ると性能的にも恐ろしく低速かつ消費電力も大きかったのだが、それでも当時としてはかなり高速な部類に属した。

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