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手元にあるような使い勝手を専用サーバーでも実現

最速10分納品!ioDriveも使える新「さくらの専用サーバ」

2012年02月22日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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2月29日、さくらインターネットの専用サーバーがまったく新たなサービスに生まれ変わる。仮想サーバーと物理サーバーのメリットをいいとこ取りしたという新しい「さくらの専用サーバ」について、さくらインターネット取締役 副社長 舘野正明氏に聞いた。

物理サーバーなのに最速10分で調達!無制限の追加

 2月21日に発表された「さくらの専用サーバ」は、昨年開所を迎えた石狩データセンターのファシリティに構築される月額制の専用サーバーサービスだ。「物理サーバーと仮想サーバーのそれぞれの弱点を解消し、クラウドのような使い勝手を実現するためにイチから作り直した」(舘野氏)もので、既存の専用サーバーサービスと完全に別物になっているという。

さくらインターネット取締役 副社長 舘野正明氏

 サーバーを共用しない専用サーバーサービスは、他のユーザーの影響を受けず、高い性能を実現する。ただ、サーバー調達や拡張に時間がかかり、OSやソフトのインストールなども業者におねがいするのが一般的だった。一方、VPSなどの仮想サーバーは、利用開始までの時間が短く、拡張や使い勝手も優れているが、なにより性能面で大きな難を抱える。「仮想化するとやはりI/Oはがたっと落ちる。せっかくioDrive(Fusion-io)のような高速なストレージを使っても、仮想化すると3割くらい性能が下がってしまう」(舘野氏)という。そこで、物理サーバーと仮想サーバーのメリットだけをいいとこ取りすべく作ったのが、さくらの専用サーバだ。

専用サーバやクラウドなど各サービスの違い

 ではどこがいいとこ取りか。わかりやすいのが納期だ。通常の専用サーバーサービスでは納期も数日はかかるはずだが、さくらの専用サーバでは、標準スペックであれば最速10分、遅くとも1時間で調達できるという。「ハードウェアやOSも標準構成で組んでおいて、オーダーが来たら、ログイン情報などを登録する形なので、VPSに近い」(舘野氏)。スタートまで数秒~数分単位というクラウドにはかなわないが、オンデマンド性はかなり高い。また、台数の追加も上限は設けておらず、標準提供されるユーザー用のVLAN ID内であれば何台でも増やせる。グローバルのIPアドレスも最大で128個割り当てられるので、「従来に比べたら、かなり大規模なシステムが組める」(舘野氏)わけだ。

 もう1つの特徴としては、使い勝手が挙げられる。通常の専用サーバーサービスではOSのインストールやサーバーの再起動は、事業者やSIerに委託するのが一般的だが、今回さくらの専用サーバでは、GUIのコントロールパネルのほか、サーバーのハードウェアの監視と制御を可能にするIPMI(Intelligent Platform Management Interface)の機能を用いたコンソールをユーザーに開放する。つまり、ユーザーは現地に行かずとも、OSの再起動や再インストールが可能になるわけだ。「ファイアウォールのポートを塞いでしまったり、OSが動かなくなっても、コンソールからエラーメッセージをチェックできる。VPSやクラウドと同じようなセルフサービス性を専用サーバーサービスで実現した」(舘野氏)という。

セルフサービス性を提供するコントロールパネル

 また、OSもPXE経由でネットワークインストールできるので、標準のCentOS 6からScientific LinuxやUbuntuに変更できる。「XenServerも用意されているので、仮想化してもらってもOKですし、サポートはできませんが、標準のRAID10をRAID5に作り替えることすら可能です」(舘野氏)とのことで、もはや手元にサーバーがあるとのほぼ変わらない環境を提供する。

I/Oを向上させるためのこだわりのストレージオプション

 このように納期や拡張性、セルフサービス性など、VPSやクラウドのメリットまで取り込んださくらの専用サーバだが、サービスは日本ヒューレット・パッカードの「HP ProLiant DL2000」3モデルを採用した「エクスプレスシリーズ」と、デルの「PowerEdge R510」4モデルを採用した「フレックスシリーズ」という2種類提供される。

 エクスプレスシリーズのHP ProLiant DL2000は、2Uの専用エンクロージャーに最大4台の独立したサーバーノードを搭載可能なモジュラー型サーバー。さくらの専用サーバではXeonの4コア、6コア、4コア×2の3モデルが用意されている。メモリは16GB、HDDはSATA 1TBのRAID1構成が標準スペックで、アップグレードも可能だ。さくらだけに価格も強烈で、Xeon E5560 2.4GHzのモデルを選ぶと初期コストは7万9800円だが、月額料金は9800円で済む。1万円を切る価格で、最新の4コアXeonサーバーが利用できるというのは、かなり「勉強してもらっている」といえる。

HP製サーバーを採用したエクスプレスシリーズの概要

 フレックスシリーズのDELL PowerEdge R510は、2Uのラックマウントサーバーで、最大12コアのCPU、最大12台のHDDを搭載可能なハイスペックなモデル。CPUやメモリ、HDDなどを柔軟に構成できるのが大きな特徴で、こちらは6コアのXeon E5645 2.4GHzのモデルで初期費用19万9800円、月額料金は1万9800円になる。

デル製サーバーを採用したフレックスシリーズ

 両者のサービス内容は、価格や即納性、カスタマイズ性など、あえて特徴を持たせ、差別化している。こうしたサーバーや部品は可能な限り、石狩データセンターに在庫しておき、標準以外の構成でも、納期短縮を実現するよう努めるという。

 これらのサーバー構成で特徴的なのは、SSDやioDriveを選択できるという点だ。物理サーバーの能力を最大限に発揮させるためのI/Oの向上は、舘野氏が特にこだわった部分。DELL PowerEdge R510では速度や容量、信頼性などに合わせて全部で7種類のストレージが選べる。

 このうちSSDはインテル製のSATA MLC SSDが4種類用意され、「とにかく安く使いたいならIntel320 120GB、容量がほしいならIntel320 600GB、速さが必要ならIntel 520 240GB。信頼性を重視するなら、書き込み耐性を強化したeMLC SSDのIntel 710 100GBですね」(舘野氏)とポジショニングを説明する。

 また、注目したいのは通常のSSDよりも高速といわれるFusion-ioのioDriveを月額課金で利用できる点だ。320GBのシングルだけではなく、より高速なioDrive Duoの640GBも用意した。「ioDrive Duoも単品で購入するとかなり高価ですが、月額で利用すると+6万3000円で選択できる。価格の決定はかなり難しかったが、良い技術でも使ってもらわなければ意味がない」とのことで、舘野氏肝いりで、実現したオプションだ。Fusion-ioは試験機材も用意してもらい、そのスピードを体感してもらうと説明している。

クラウドとの組み合わせで最適なシステム構成を実現

 サービスはリリース以降も随時強化され、5月にはさくらの専用サーバと「さくらのクラウド」のローカルネットワークをVLAN ID変換装置を介して、シームレスに接続する「サービス間L2接続」も提供する予定。「私だったら、データベースは専用サーバーを使って、Webのフロントはクラウドに任せる。L2接続を使うと両者をつなげるだけではなく、両者の良い部分を組み合わせたシステムを容易に構築できるようになる」(舘野氏)とのことで、専用サーバーサービスとクラウドの優れた部分を組み合わせた提案していくという。

専用サーバとクラウドとの連携をL2接続で実現

 こうしたトガッたスペックのさくらの専用サーバが実現したのも、石狩データセンターの条件のよさが背景にある。冷却効率が高い石狩データセンターであれば、ラックあたりの電力供給量が増え、高性能・高密度なモジュール型サーバーも導入も可能になったという。さくらのクラウドに続く、石狩産のサービスの第2弾として、ITのコストを下げるという同社の戦略を着実に実行に移したモノといえる。

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