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山谷剛史の「アジアIT小話」 第15回

中国でマカーを「果粉」 アンチマカーを「果黒」と呼ぶ理由

2012年02月21日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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Apple製品代理店。どの大都市の繁華街でも見るようになった

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記事掲載当初。「果黒」を「黒果」と誤って表記していました。お詫びして訂正いたします(2012年2月22日)

 中国ではいつしかマカーのことを「果粉(発音はグォフェン)」と呼ぶようになった。「果粉」の「果」の字は「苹果(アップル)」の「果」、粉は中国語でファンを意味する「粉絲(発音はフェンスー)」の「粉」、本来「果粉」はその字の通り「果物を粉々にして乾燥させた加工食品」であるから語呂的にも受け入れられたのだろう。

特に「90後」と呼ばれる1990年代生まれの10代~20代前半に、メンツ目当てでMacは人気だという記事

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「QQ for Mac」ユーザー調査、高給取りが多いのが特徴(1元=12円)

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 中国ではiPodやiPhoneによりAppleが認知されたが、それらにとどまらず、さらにMacまで手を出す人を果粉と呼ぶようだ。Macユーザーは昨年の調査では「20代以下、高学歴、高収入、職業ではデザイナーやIT業に従事する人、男性にそれぞれ多い」という傾向がある。

QQ for Macのユーザー調査によれば、Mac使用者のほとんどが「Mac OS X」をメインで使用している

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 果粉を自称する人は多く、その用法を見てもネガティブな意味合いはないようだ。使われた形跡は中国のインターネット黎明期である2000年代前半から見られるが、現在では当時なかった「Windowsとのデュアルブート化は果粉にあらず」という暗黙のルールができているなど、果粉認定のハードルは上がっているようだ。

 一方で、アンチ「果粉」は「反果粉」ともいうが「果黒」(発音はグォヘイ)という呼び名がメジャー。iPhone、iPad、Macを入手してスネ夫のように見せびらかす「果貴族」(発音はグォグイツー。Apple製品が買えるほど金持ちな人々。やや蔑称)を見て、快く思わない人々が果黒となり、同じ気持ちを持つ中国全土の人々がネット上で気持ちを共有している。

地下鉄車内のiPadの広告。今後中国でのiPadの行方はどうなる?

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 今、中国の大都市で地下鉄やバスに乗ればiPhoneを含めスマートフォンユーザーを多く見かける。スマホが売れた理由はゲームに加え、チャットソフト「QQ」をはじめとしたおなじみのソフトのスマホアプリが充実してきたというのが大きい。ちなみに、PCが最初に普及したきっかけは、ほぼ無料の海賊版ゲームやQQだった。

QQ for Macのユーザー調査によると、30歳以下が多数派(左)で、MacユーザーはiPhoneやiPadなどを所持する人が85.33%もいる(右)

 だが、QQのMac版のリリースはベータ版すら2008年で、Windows版に比べて非常に遅かった。しかも、そのQQですらリリースは早い部類で、中国においてWindowsではインストール必須ともいえるツールのMac版が登場したのもここ最近である。例えば、人気中国語IME「捜狗輸入法Mac版」やダウンローダー「迅雷 for Mac」は昨夏、動画視聴ソフト「PPTV for Mac」は今年、それぞれリリースされたばかりだ。

 政府がインストール義務化を目指したフィルタリングソフト「グリーンダム」すらMac版はリリースされなかった。中国では定番のタブブラウザーやセキュリティソフトなどはまだまだMac版は出ておらず、使いたいソフトは出そろっていない状態だ。

 そのため果粉だと見栄を張って購入したものの、使いこなせず使う用途もなく、果黒に「愚か者」だとして笑いものになるケースをしばしば聞いた(バカにされ憤慨したあげく、果黒に鞍替えする人も稀にいる)。

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