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あるのは「人材」「インフラ」「電力」!ないのは「自然災害」「検閲」

アジア期待の星!「データセンターならマレーシア」の理由

2012年02月06日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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マレーシアがなぜICT関連に注力するのか?

 MeDCはマレーシアの政府機関で、同国のICTの新興を進める役割を担っている。説明会において、MDeC Director,Corporation Communications DivisionのVijayaratnam T.氏は、マレーシアの国家戦略とICTへの取り組みについて説明した。

MDeC Director,Corporation Communications DivisionのVijayaratnam T.氏

 マレー半島南部とボルネオ島北部にまたがるマレーシアは約2800万人の人口を持つ多民族国家で、1959年にイギリスから独立して以降、スズやゴムを中心とする労働集約型のローテク産業で経済が成り立っていたという。その後、1980年代にハイテク産業への移行を開始し、1990年代には鉄鋼や自動車の工場も進出してきたが、「安い労賃では中国やインドには勝てない」(Vijayaratnam氏)という課題があった。そこで、国策として1995年から知識集約型の産業に移行することを決定し、ICTやマルチメディアの振興を進めるための開発公社MDeC(Multimedia Development Corporation)を設立。マレーシアを国際的な情報ハイウェイのハブとする「MSC(Multimedia Super Corridor) Malaysia」という特区構想を推進するに至ったとのことだ。

 MSC Malaysiaは、インフラや労働力、通信環境などのさまざまな観点でメリットがあるという。Vijayaratnam氏は、「単なる税制面の優遇だけではない。先進国並みの高い知識を備えた人材をローコストで獲得できることが可能だ。周りのアジア諸国に比べ、自然災害が少なく、電力供給も安定している」とアピール。電力に関しては、原発がなく、水力や地熱などが今後導入される予定だという。また、政情が安定しており、法制度が整備されている点も強調。「100%検閲は行なわない。知的財産もきちんと確保している」(Vijayaratnam氏)といった条件も魅力的だという。進出にあたっては政府がバックアップし、窓口となる機関もMDeCのみなので、シンプルだと説明した。

マレーシアのメリットは人材、コスト、環境

 MSC Malaysiaでは、サイバーシティと呼ばれるICT拠点の整備やネットワーク構築を中心に進められている。1996~2003年のフェーズ1では首都のクアラルンプール近郊の工業団地「サイバージャヤ」に50社が入るのみだったが、2004~2010年のフェーズ2では国内のサイバーシティをメッシュ化し、2008年には2500社の誘致に成功した。ICT関連では、デルの生産拠点が有名だが、日本ではNTTコミュニケーションズがフェーズ1の段階からマレーシアへの進出を進めており、データセンターを構築している。

3つのMSC Malaysiaのフェーズ

23に上るMSC Malaysiaのサイバーシティー

 2011年末の段階で国内のサイバーシティは全部で23におよび、「15年前にNTTコミュニケーションズが進出した当時は、現地に猿や蛇もいたが、今や拠点内にスターバックスができるまでになった」(Vijayaratnam氏)とすっかり近代化。2011~2020年のフェーズ3では国際的なICTハブとしての地位を確立していく予定になっている。

中国とインドに続く地位を目指す

 続いて、MDeCのHead of Policy Planning and Advocacy Unit Digital Infrastracture DepartmentのTan Tze Meng氏がデータセンター事業について説明した。

MDeCのHead of Policy Planning and Advocacy Unit Digital Infrastracture DepartmentのTan Tze Meng氏

 MDeCは2010年からデータセンター事業を積極的に推進しており、2020年までにデータセンターの供給量を今の10倍にあたる500万㎡にまで拡張していくという。現状、マレーシアのデータセンター供給面積は中国、韓国、オーストラリア、シンガポール、台湾、インドの次となり、アジア各国の後塵を拝している。

アジアにおけるデータセンターの動向

NTTコミュニケーションズが自前のデータセンターをかかえる

 しかし、昨今は海外企業の進出が相次ぎ、国内でのICT需要も高まっていることから、データセンターの成長が見込めるとのこと。また、「今までリーダーだった香港やシンガポールには土地がなく、人件費も含め、コストが高くなっている。国土が小さいと、メインはともかく、DRサイトを構築するのが難しい」といった状況もあることから、今後はアジアでのプレゼンスも向上していくと説明した。

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