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マレーシア開発公社(MDeC)が2回目の発表会

NTT Com傘下のエミリオ、マレーシアの魅力を語る

2012年05月29日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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日本企業も続々進出!タイ洪水の影響も

 MDeCは、ITやマルチメディア、アウトソーシング領域のマレーシアへの誘致を行なう「MSC Malaysia」を推進する組織になる。古くからマレーシアは労働集約的な製造業の誘致を進めてきたが、1990年代後半から国家戦略を大きく転換。コスト競争の激しい製造業から、より高付加価値な知識集約型の業種の誘致を積極的に進めるMSC Malasiaプロジェクトを立ち上げる。これを推進すべく設立されたのがマレーシア開発公社(MDeC)で、「サイバージャヤ(Cyberjaya)」をはじめとした特区を国内に設立することになる。近年、日本企業の誘致も積極的に進めており、富士通、パナソニック、NTTコミュニケーションなどいち早く進出している。

MDeC Director,Corporation Communications DivisionのVijayaratnam T.氏

 発表会では、MDeC Director,Corporation Communications DivisionのVijayaratnam T.氏は、まずマレーシアの概要について説明した。東南アジアは津波や火山、地震など自然災害の多い地域にあるにかかわらず、マレーシアの国土をめぐる環状のエリアは災害の発生率がきわめて小さいという。また、マレー人、中国人、インド系などの人口比率がまんべんなくミックスされた多民族国家で、言語能力も高く、賃金のインフレ率も低い。「人件費ももっとも安いとは言えないが、教育水準や生産性、ビジネス効率を考えると高いとは言えない」と、他国に比べた差別化ポイントをアピール。さらに、「マレーシアは国としてまだ若いので、レガシーなシステムへの依存が少ない。最新のグリッド化された電力網が提供されている」(Vijayaratnam氏)で、インフラレベルも高いと説明した。

 この結果として、MDeCがフォーカスしているITやマルチメディア、アウトソーシングなどを中心に、想定を大きく超えた3000以上の拠点が置かれているとのこと。昨今は、タイの洪水の影響もあり、「日本企業にとってのバックアップセンターとして注目を集めている」(Vijayaratnam氏)ことも多いほか、市場として有望なインドネシアやタイへ進出する際の東南アジアでの足がかりとして、マレーシアを選ぶケースも増えているようだ。

専門性の高いプロフェッショナルサービスも増加

 MDeCによると、特にアウトソーシングの分野は、伸びも著しいという。従来アウトソーシングというと、コールセンターやサポート窓口などのBPO(Business Process Outsourcing)、テクニカルなヘルプデスクのITO(IT Outsourcing)がメインだったが、マレーシアではより専門性の高いKPO(Knowledge Process Outsourcing)を中心に実績を積んでいるという。「KPOは、いわゆるプロフェッショナルサービスだ。銀行でいえば、融資契約自体は誰でもできるが、融資枠の検討になると専門性が必要になる」(氏)とのことで、政府自体も能力開発プログラムを打ち出しているという。

アウトソーシングセンターとしての伸びも著しい

 こうしたMSCのプロジェクトの傘下でサイバージャヤに拠点を構築したのが、BPOサービス会社であるエミリオだ。NTTコミュニケーションズ傘下のエミリオは、IT関連のサービスやアプリケーションの遠隔運用やヘルプデスクなどを提供しており、マレーシアにITインフラのグローバルデリバリーセンターを設立した。

エミリオ取締役 副社長 岸本慎吾氏

 エミリオ取締役 副社長の岸本慎吾氏は、「新興国にありがちな賄賂などがなく、インフラコストも安い。人が住む場所としても優れており、環境汚染がまったくなく、ガソリンも、食費も、安い」と話した。外資系企業の設立に制限がなく、税制優遇面の措置も大きいので、事業立ち上げのコストが低いというメリットもある。英語が公用語として普及しているほか、多言語・多民族への理解も深く、コミュニケーションの質も高いと、アウトソーシング拠点としてのマレーシアを絶賛した。

ITインフラサービス拠点として優れたマレーシア

 気になるネットワーク回線だが、NTTコミュニケーションズが積極的に進出していることからわかるとおり、現状でも日本とマレーシア間の回線は非常に高速で、増速も進められている。また、今後は米国やヨーロッパとの回線も増速していく予定となっている。

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