店頭では情報ではなく、経験が求められる
インタビューの前段となるプレゼンテーションでCharlton氏は「これまで技術中心だったITが、情報中心のITへとビッグシフトしている段階にある」と述べた。ミレニアム世代と呼ばれる1992~2000年生まれの若者が主要な購買力を持つ2020年ごろには、全世界に2500万種類のアプリケーションと40億のオンライン人口、310億台のデバイス、1.3兆のタグが氾濫し、扱われるデータは50兆GBにも及ぶ。
「Information Everywhere時代が到来する」と、Charlton氏は言う。
一方スマートフォンが象徴するように、様々な情報を消費者がいつでも好きな場所で取得できる環境が急速に整いつつある。小売店に目を向けると、店を訪れる顧客のほうが店員よりも深い情報をオンラインで入手しているという状況が生じてきている。
「モバイル技術の普及は、製品の情報を店員に聞く意味をなくし、店頭のロイヤリティーが失われつつある。一方で経験に対するデマンドはものすごく、顧客はよりよい経験を求めている」とCharlton氏は話す。
つまりリテール市場は、顧客の行動を再定義する段階に来ているのだ。
端末をいくつ売ったか、というビジネスではない
こうしたモビリティーへの関心が高まっていく状況と歩調を合わせる形で、キオスク端末やデジタルサイネージの価値も高まってくる。チケットやデモ、あるいは単なるポスターの代替品としてではなく、インターネットを通じてスマートフォンやパソコンと連携を取る、顧客を知り、顧客に働きかける端末が必要になる。
また、タブレットなど店舗用のモバイル端末は、TCOを削減するために、単一の役割ではなく、ひとつのデバイスで様々な用途に対応できるようフレキシブルに動作しなければならない。運用管理やセキュリティーといった部分をクリアーしつつだ。
しかし、アジア市場ではティア2、ティア3のリテーラーが多く、単に筐体を買うという部分から先に進めていないとCharlton氏は指摘する。同氏は、アジア市場では欧米とは異なり、ティア2、ティア3のリテーラーの実績をティア1に引き上げていくアプローチを取っていきたいと話す。
様々な視点と協業から、価値を生み出す
そしてその実現に必要な、独自の価値と立ち位置をHPは持っていると自信を示す。インタビュー中でもGo-To-Marketの速さを強調した同氏だが、大企業でありながらこういったきめ細かで多様な対応が可能である点こそが、いまHPがリテール市場で存在感を高めている理由なのかもしれない。
日本市場は大企業を中心にHPのソリューションが普及しており、その流れの中でPOS端末も検討してみるという流れが多い。現時点では専門店・飲食店が強いとのことだが、ブレストの中では、理容店などへの親和性が高いという意見も出ているという。POSに関しては、業界ごとに導入されているソフトがバラバラで困難は伴うが、様々なベンダーと協業しながら、価値を出せるインターフェースを作っていくとのことだ。