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リテール市場では日本のリテール市場

消費者に価値のある提案を――HP責任者に聞く、リテール戦略

2012年01月23日 11時00分更新

文● 編集部

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ヒューレット・パッカードのAPJ(アジア太平洋/日本地域)で、リテールソリューションの部隊を率いるChristian Charlton氏

 昨年世界第2位のシェアを獲得し、成長を続けている米ヒューレット・パッカードのリテールビジネス。それでは同社は日本を含むアジアのビジネスをどう見ているのだろうか? 関連記事に引き続き、アジア太平洋地域でリテールソリューションのディレクターを務める、Christian Charlton氏にお話を伺った。

Go-To-Marketの速さが持ち味

── POS端末の市場で昨年世界第2位のシェアを獲得できた理由は?

Charlton 「HPのPOS端末には10年の歴史があり、高い製品のデリバリー力を誇っています。米国においてはティア1と呼ばれる大手を中心に、エンタープライズのビジネスを長年続けてきたHPにPOSの領域もカバーして欲しいという要望がありました。

 実際に製品を投入し始めたのは2000年代の初めからで、頑丈で使い勝手のいいものを提供してきました。その後2006~2007年に、リテール市場の要望に応えるため、堅牢性やサイズといったハードウェアのデザイン、ソフトウェアを大きく見直しました。

 2008年以降はリテール業界に詳しい人間を経営陣に招いています。スタッフを強化し、グローバルチームを組織しています。

 私は競合社から移籍し、昨年からアジア太平洋地域および日本のリテールビジネスの指揮を執っています。外部から見たHPは行動志向がしっかりしており、人材も豊富、そして製品の質が高いという印象でした。また、広がりを持った製品ポートフォリオを持っていて、このあたりが強みになっていると感じています。

 4年前を振り返ってみると、当時は世界的なレガシープレーヤーが存在しました。しかし現在のHPは世界市場だけでなく、各国のローカルなプレーヤーとしても大きくなっています」

── 日本市場でターゲットにする小売業態は?

Charlton 「ブレストの段階ですが、まずはPOSの分野でブランドを確立することが必要です。日本ではティア1のリテーラーへの導入が進んでいますが、強い競合もいます。しかし競争に勝つ自信はあります。激しい競争を勝ち抜くことで、他国への模範となるでしょう。

 今後は大手のティア1から、中小のティア2、ティア3といった領域へと進んでいきたいと考えていますが、これは他のアジア各国とは異なる流れです。他の国々では日本のようにティア1と呼ばれるリテーラーはなく、ティア2、ティア3が中心となるからです。製品や技術力はもちろんですが、鍵となるのはパートナーシップです。特にソフトウェアメーカーとの連携を強めていきたいと考えています」

答えはYes、正しいことをしているから、成長できる

── IBMなど大手の競合も存在しますが、彼らにはない価値をHPは提供できますか?

Charlton 「他社とはニューヨークより大きな違いがあると感じています(笑)。HPの優れている点は行動力の高さです。彼らのリテールソリューションは複雑で、ここ5年の間にイノベーションを起こしているとは言えない状況です。市場へのアプローチの速さが異なります。

 われわれはバックオフィス、インストア、モバイル、サーバー、仮想化技術、POS端末、デジタルサイネージなど広さと深さを持ったソリューションを持っています。また、マイクロソフト、インテルに加え、(デジタルサイネージソフトの)Scala社など、強いソフトウェアのパートナーもいます。また、定量的ではなく定性的な基準で、ホスピタリティーなど日本特有の事情に理解が深い、質のよいパートナーを選んでいます。

 質問に結論としてお答えするなら“Yes”です。簡単に言えば、成長できているということは、何かしら正しいことをしているという意味だからです」

デジタルサイネージは再評価すべきときが来ている

── 日本市場でやっていく上で留意していることは?

Charlton 「まず解かないといけないのは、日本の市場は閉鎖的であるという誤解です。確かにレガシーシステムや自社開発のシステムが強いという伝統はありますが、日本企業も海外進出を考えるならベストパートナーが必要になるでしょう。われわれは、オープンプラットフォームやグローバルスタンダードを取り入れていくことで成長を約束できますし、ARTS(The Association for Retail Technology Standards)の標準化プロセスなどを紹介したりもしています。

 それとは異なる視点となりますが、われわれはマインドセットを共有できる人々とパートナーシップを結んでいきたいと考えています。単にAPIやプラットフォームを提供すればいいのではなく、エコシステムとして、技術を活用し、有益なものを出せると思える人々を選んでいます。

 ここに根本的な違いがあると思います。共通の目標を持つことで、リテーラーだけでなく消費者に対して価値を与えたいということです」

── 日本でもデジタルサイネージに可能性があると考えますか?

Charlton 「日本は見直す時期にあると考えています。リテールソリューションはいろいろな要素をツギハギして作るものではありません。パネルを売るとか、競合他社よりいいものを作るといったものではなく、パートナーソリューションとして考えていくべきものです。そういう意味で日本のデジタルサイネージ市場には再評価が必要です」

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