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RAIDカードベンダーとデータセンターのニーズ

Set and Forgetのデータセンター市場を探るPMCシエラ

2011年12月26日 06時00分更新

文● 大谷イビサ

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AdaptecブランドのRAIDカードを展開するPMCシエラは、データセンター市場の開拓を進めているが、そこには既存のOEM向けの製品とは異なるニーズが存在しているという。PMCシエラ チャネルストレージ事業部 バイスプレジデントのジャレド・ピーターズ氏にデータセンター戦略について聞いた。

RAID会社が考えるデータセンターのニ-ズ

 通信やストレージの半導体を製造・販売するPMCシエラがアダプテックを買収したのは2010年。以降、PMCシエラのチップとアダプテックのRAIDコードを統合した製品を投入し、従来からのSSDによる高速キャッシング「MaxCache」やキャッシュの保護を行なう「ZMCP(Zero Maintenance Cache Protection)」、データの暗号化など付加機能も引き続き強化を図っている。この結果、RAIDカードやチップなども含めたストレージ事業の売り上げの割合は、2011年全売り上げの58%に達したという。ピーターズ氏は「ここまで円熟したRAIDコードを保有しているのは、HPとLSI、そしてAdaptecの3社だけだ。6Gbps SASへの対応も、ずいぶん前から行なっている」とのことで、OEMの顧客に対して着実に積み上げてきた実績も大きいと話す。とはいえ、12Gbps SASに関しては、「パフォーマンスは高いが、ディスクのほうが追いつかない。それほどすぐには普及しないだろう」(ピーターズ氏)ということで、製品投入は急がないとのことだ。

PMCシエラ チャネルストレージ事業部 バイスプレジデント ジャレド・ピーターズ氏

 そして、同社が新たにチャレンジを始めたのが、サーバー集約の著しいデータセンターの市場だ。米国でも規模の大きなメガサイトが増えており、こうした事業者の取引額も拡大しているとのことだ。

 とはいえ、こうしたデータセンター向けの製品は、既存のユーザー向けの製品とは異なるニーズを満たす必要があるという。氏は「既存のユーザーはサーバーごとにRAIDカードを搭載していたが、データセンターの場合、ラックやサーバールーム、地域にまたがったデータの冗長化を行なう。また、データセンターはスループットや帯域よりも遅延を重視する一方、サーバーのCPUが新しいかどうかにはあまりこだわらない。これらは弊社のようなRAID会社にしてみれば、とても大きな変化だ」と語る。また、いったん取り付けたら、壊れるまで触らない「Set and Forget」もデータセンターの大きな特徴だという。壊れたら、サーバーごと交換してしまうというサイクルや管理ポリシーは、データセンターならではの概念といえるだろう。

 こうしたニーズに対し、前述したようなPMCシエラが提供する付加機能は、ユーザーにも認知されつつあるという。たとえば、バッテリを交換する必要がないZMCPは、Set and Forgetを前提とした他社と比べた差別化できるポイントといえる。また、実装密度を向上させるためにフットプリントを小さくしたAdaptec 6Tシリーズなども投入しており、データセンターでの利用を前提としている。「また、読み出しだけではなく、書き込みもサポートした最新のmaxCache 2.0もデータベースなどのレスポンスを大幅に改善できる」とサービスの差別化に貢献するという。2011年10月にリリースされたばかりのQシリーズではmaxCache 2.0 SSDキャッシングを採用することで、HDDやSSDを交えたストレージ階層化を実現できる。読み出し性能も大幅に向上されたmaxCache 2.0は、ユーザーのレスポンスもよいという。

maxCache 2.0 SSDキャッシングを搭載した「Adaptec RAID 6Qシリーズ」

 2012年も、データセンター市場を見据え、積極的に新製品を投入していくという。

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