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求めるのは、不変か変革か

NECとレノボの提携、筆者陣はどう考える?

2011年08月01日 06時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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グローバルでの競争力確保のため、統合は不可避か

 ネットブックのように世界的に見るとPCの価格低下があり、大きな市場となり得る発展途上国でビジネスするには、大量に作って安くするしかない。そうなると、日本市場といえども低価格化と無関係にいられない。

 現在、HP、DELL、Acerの上位3社までが(グローバル規模で)大量に生産している関係で最低価格を付けられるメーカーだが、4位以下は単独では生き残りが難しくなる。そういうわけで、統合/淘汰の時代に入ったのだと思われる。

 今回の提携は、日本国内のみのことだが、これはNECが現時点で海外展開していないためだろう。海外展開している国内企業もいずれ統合を考える時期が来るのでは。

(塩田紳二/フリーライター)

日本人的Otaku気質を世界に

 20世紀終盤、日本国内で独自に進化したテクノロジー文化が華開いた。各社が独自アーキテクチャのパソコンを発売し、各種ゲーム機器や携帯電話がそれぞれプラットフォームとなり、ハードとソフトからなる複雑な世界を展開していた。それらはコスト高だけど細部まで気が配られたとても日本的な製品やサービスだった。それは日本人的凝り性やオタク気質の発現だったともいえる。

 今日本はグローバルスタンダードの波に洗われ、低コスト化やユニバーサル化の恩恵を受けつつ一方で、かつて積み上げた微に入り細を穿った品質は失われつつある。例えば、日本語の長文を入力するだけなら、いまどきのWindows PCや iPad よりも、1990年代のPC-9801やMobileGearのほうが快適だった。

 かつて日本を代表したNECのパソコン事業の遺伝子が、旧IBMやレノボの血脈と入り交じることで、グローバル時代のOtakuテクノロジー文化を創り出したら面白い。

(根岸智幸/ネットメディア研究家・本が好き!編集長)

合弁によるシナジーは他メーカーの先例にもなりうる

 この合弁はとても意味があるものだろう。特にBtoB的な観点ではスケールメリットが活かせるのではないか。

 日本国内パソコン市場ではNECとレノボ・ジャパンを合計すると25.3%(IDC Japanの調査)。しかし世界のパソコン市場では、(GartnerおよびIDCの調査で)20%弱のシェアを持つ米ヒューレット・パッカードが最高峰だ。これは2001年に、HP(同4位)がコンパック(当時の世界シェア2位)を買収したことによって打ち出したシェアだ。

 (2位のデルと3位のエイサーは僅差で競り合っているが)NECレノボになることで世界シェア13%(現在レノボで世界シェア9.8%)以上になれば世界シェア2位に躍り出る。今後はHPを抜くチャンスも考えられる。

 一方国内市場では、パナソニックのLet'snoteとソニーのVAIOのような高付加価値陣営の合弁ブランドなどの登場も夢見たいものだ。

(神田敏晶/KandaNewsNetwork)

PC-9801スキーとして合弁会社に望むこと

 NECは1990年代後半、ヨーロッパ市場で高いシェアを持っていたパッカードベル社を買収したことがある。相手先設計のPCを自社ブランドに組み込むODMにも積極的に取り組んでおり、台湾企業などとの連携を深めてきた。しかし、何となく他社との連携がうまくいかないイメージがあるのは筆者だけだろうか。

 5月に発表されたNECの2010年度決算を見ると、携帯電話や個人向けPCを含むパーソナルソリューション事業は、携帯電話機事業の統合効果やディスプレーの好調により増収となっているが、営業損益は-19億円となっている。決算説明会では既存の携帯電話機の販売不振、新端末開発費用の増加などが理由に掲げられている。売上高は7665億円で、比率としてはモバイルターミナルの売上高が3035億円。PCその他が4630億円となっている。

 今回の提携は、国内市場でのシェアを確立したいレノボと低コストでの生産、部品供給を潤滑に進めたいNEC側の思惑が合致した結果だと思う。合弁というと、NEC三菱電機ビジュアルシステムや、ルネサスエレクトロニクスが思い浮かぶ。いわばNECの常套手段だ。当面は相互のブランドが独立して継続するとのことだが、合弁会社内のコンセンサス、ぶっちゃけていうなら、どこまで風通しをよくできるかも、今後の成否に直結するのではないか。

 古くからのPC-9801スキーとしては、レノボに吸収という事態は避けたい。また、ビジネスにも安心して使える高品質ノートは、ジャパンブランドの価値そのものだ。ぜひとも国内での開発を続けてほしい。

(小黒直昭/フリーライター)

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