いきなりだが、これだけスマートフォンや携帯端末が流行っているのに、雑誌やWeb媒体では語りにくいことがある。それは「公衆回線の実速度」だ。
なぜなら、計測する時間や場所、その近辺にどれだけのユーザーがいて、どれだけ帯域を使っているかで実速度は大きく異なる。だから、何度計測してもそれはその時点でたまたま出た値でしかなく、後から別の観測者が計るとまったく別の結果が出てくる。
また、計測する端末の性能やアクセスするサーバーによっても異なる。もちろん、これらを加味した上で「この端末のこの時点のこの場所ではこういう数値でした」という結果を出すのはアリなのだが、それでも回線キャリア別、端末別に絶対的に「速い」「遅い」「数字はこれぐらい」という内容が言えないのは、ライターにとっても編集者にとっても歯切れが悪く、記事の説得力が出せないので残念な話である。
これは携帯端末を販売する回線キャリアにとっても同様だ。「最大下り7.2Mbpsに対応しております」といっても、「じゃあ実際にはどれだけのスピードが出るの?」と聞かれると「お客様のご利用場所の状況によって異なります」としか答えようがない。
いつも同じ定点で同じ時間に回線速度測定したり、さまざまな場所でランダムに回線速度を測定して平均を出すのが、数値としての信憑性を出すやり方なのだが、それでも計測時にどれだけのユーザーが接続していて、どれだけのユーザーの通信が行なわれているかは、制御することも知ることもできない。
というわけで逆に、場所も端末もランダムにチョイスして、「この時はこうだった」というレポート形式の記事を連載にしてみることにした。ある意味、正統派なレビュー記事からはかなり外れているが、楽しんでもらえると幸いである。
3GもWiMAXも使えるスマートフォン
「HTC EVO WiMAX ISW11HT」
今回試す端末はauのスマートフォン「HTC EVO WiMAX ISW11HT」である。キモとなるのは、auの「3G」回線と「WiMAX」回線の2つが使えるという点。しかも、ユーザーが切り替える必要はなく、WiMAXが使える場所では、下り最大40Mbps、上り10Mbpsの高速通信(理論値)が行なえる。
WIN HIGH SPEEDに対応していない本機では、auの3G回線では、最大3.1Mbps、上り最大1.8Mbpsという速度(理論値)なので、その差は大きい。ただし、WiMAXは高速だがサポートエリアが(3Gと比較すると)狭く、一方の3G回線は速度は遅いが人口カバー率はほぼ100%となっているため、カバーエリアは広い。
この2つの回線の特徴をうまく活用できるのが本機だ。シングル回線端末の場合、ユーザー数の多い都市部では回線速度が落ちるが、本機であればWiMAXがカバーしてくれるので、逆に速度は上がる(ハズ)。
WiMAXがカバーしていない地域では、人口カバー率100%の3G回線で対応できるというわけだ。東京や大阪など主要都市の近郊に住むユーザーであれば、毎日の移動は会社や学校との往復というパターンが多いだろう。この場合はWiMAXがカバーできる割合が高いので、普段使いで高速回線を使うことができる。
というのが製品のおおまかな紹介だ。では実際に試してみよう。本記事では以下のルールを設定してみた。
本連載における“ススムのオキテ”
- 計測場所はランダムに決める。また、出発地と目的地の2ヵ所以上で計測を行なう。
- 回線速度の計測は他のキャリアの製品でも同時に行なう。
- 回線速度は、測定ソフト2種類とASCII.jpのトップページが何秒で開けるかを比較する。
上記を補足すると、どこで測定するかはエリア情報などを見ずに筆者が行きたい場所、または取材などで用事のある場所で測定する。測定ソフトはiPhoneとAndroidで同じアプリがある「Speedtest」(Xtreme Labs Inc)と「Speedtest.net Mobile Speed Test」(Ookla)を使用する。
そして最後に、全体的な感想を込めて製品を擬人化し、そのキャラクターを主役にした4コマ漫画を掲載する。まあ、面白いかどうかは別にして、なるべく感想をわかりやすく伝えたい、という筆者なりの試みである。