「驚くと、人間はなぜか笑ってしまう」
―― 実演販売とテレビのつながりをもう少し教えてください。
マリック 実演販売は、売るのが仕事ですからね。ただマジックを見せるだけでお金がもらえるなんて、ラクだなーと思ってましたよ。売りつけられると思った途端、お客さんは帰っちゃう。だから笑わせる必要があった。人は、笑わないとモノを買わないですから。
―― お客、笑わないとダメですか。
マリック ムスッとしてモノを買う人はいないでしょう? ハイになっていないと衝動買いは起きない。だから、マジックは「不思議なもの」でなければならない。ただのタネ、トリックではいけないんです。驚くと、人間はなぜか笑ってしまう。それが本能なんですよ。
―― じゃ、とにかくニコニコし続けてもらうと。
マリック さらに、「自分にもそれはできる?」と聞かれるんですが、そこでタネを明かしたらモノは売れません。だから、お客はまったくタネに触れない。そのときに必要なのが何よりもトーク技術でした。それが「超魔術」のベースになっています。
―― なるほど! タレントさんと絡んだり、テレビカメラに話しかけたりという。
マリック それに、テレビというのはものすごく回転が速いですから、5000種類ものネタを実演してきたのが良かったと思います。どんなにつまらないマジックでも、売らなきゃいけないから、面白く見せる。そのためのアレンジが自分の中にあったんです。
―― アレンジですか。
マリック マジックはバリエーションですから。19世紀にほとんどマジックのバリエーションは出尽くしています。ものを出すにはこれを使う、鏡をこの角度に置くと消えたように見える……。そういう原理は徹底的に研究されてしまったので、あとはそのアレンジなんですよ。そのアレンジこそが、マジシャンのオリジナリティなんです。