2009年よりルノーF1チームとパートナーシップを結び、サーバーやワークステーション、モバイルワークステーションをチームに提供する米ヒューレット・パッカード(以下、HP)。
同社が現在アジア5ヵ国で実施しているのが「Workstation Solution World」だ。その日本開催に合わせて、同イベントのゲストで先日2010年のシーズンを終えたばかりのルノーF1のITディレクター マイケル・テイラー氏とHPのワークステーション担当者にインタビューできる機会が提供された。
米HPのアジア太平洋地域向けにでクライアントソリューションなどを担当しているアネリーズ・オルソン副社長はHPがルノーF1チームのIT環境を全面的にサポートしている点を強調する。HPはF1マシンの設計・生産製造・性能調査といったあらゆる場面で役立つ技術を提供しており、ルノーF1チームが勝利できるよう万全の体制を整えているという。
ルノーF1チーム ITの活用でコスト削減に成功
ルノーF1チームでITマネージャーを務めるマイケル・テイラー氏は、まず、F1のレースというものが、設計、生産、製造、実際のレース運用といったあらゆる場面において、ITに依存していると語る。チームのパフォーマンスを向上させるには、ITとの密接な関係が必要であるとした。
F1は世界中を移動しながらレースをするため、常に大型のワークステーションを運ぶことはできない。HPから提供さた数百台のモバイルワークステーションは、最高のパフォーマンスを整えるという役目をこなしてレースの現場で活躍しているとのことだ。
詳細は明かすことはできないが、レース中は車体に取り付けられた150のセンサーから送られてくるデータをリアルタイムに処理し、2分間に3000回以上のレースシミュレーションをする。それが作戦の考案などに反映されているとのことだ。ちなみに1回のレースで集まるデータの容量は約800GBという膨大な容量になるという。
もちろん、HPの機材が活躍しているのはレースの現場だけではない。ルノーF1チームが車体を生み出す段階からHPのワークステーションたちが使われている。イギリスにあるテクニカルチームでは400台のHP製品が運用されている。また車体の開発をするフランスのテクノロジーセンターでも150台のHP製品が使われているとのことだ。
このほか、さまざまな規制のため、コンピューターを使った、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)シミュレーションの重要性が高まった。この現場でも同社の製品が500台以上運用されている。
ルノーF1チームでは2010年から、運用OSをUNIXからWindowsベースに乗り換えた。これにより、130万ポンドの予算削減に成功していることも明かした。
次ページでは、記者団からのきわどい質問にもユーモアを交えて回答する、ルノーF1チーム ITマネージャーのマイケル・テイラー氏の質疑応答をお届けする。