契約書は、見積書に沿ってクライアントから発注された業務内容の詳細をまとめた書類です。具体的には、今後のWebサイト制作にあたっての基本的な約束ごとを取りまとめた「業務委託契約書」、発注単位ごとの金額や条件を定めた「個別契約書」、納品後の毎月のサポート内容をまとめた「保守契約書」など、内容ごとの契約書が存在します。ただし現実的には、業務委託契約書や個別契約書は省略して受注時の注文書が契約書代わりになる場合も少なくありません。
また、契約書を取り交わした後に、SLA(Service Level Agreement:サービス品質合意書)と呼ばれる書類を作成する場合もあります。SLAには、制作のスケジュールやクライアントとの役割分担、指示系統を含むプロジェクト体制などを記載します。
契約書に盛り込む内容と契約のタイミング
契約書は、まず甲乙の形で発注者(支払い責任者)と受注者を明確にしてから、制作開始の方法、納品方法、検収、支払条件、支払後の瑕疵担保責任、保証内容、裁判所の管轄など、制作にあたっての条件や決まりを記載します。また、保守契約書の場合は、保守をする範囲、トラブルの受付時間や方法、保守の期間、金額などを明記します。
契約書は、後で「言った、言わない」といったトラブルが起きるのを避けるためにも、なるべくWebサイト制作を開始する前に交わしましょう。
受注契約を交わす際の注意点
Webサイト制作は、クライアントが実施するPRイベントなど他のマーケティング活動と同時進行になるケースがよくあります。そのため、受注から納期までの時間が極端に短かったり、クライアントが多忙で契約内容を説明する時間が取れないまま制作の進行を求められたりする事態も頻繁に起こります。
制作側は、納期を優先して制作を進めざるを得ない状況でも、実制作者と契約の管理担当者を分けるなどして、契約を進めるように工夫する必要があります。納品後の支払いトラブルを回避するためにも、時間のない案件であればあるほどきちんと契約を交わして進めるよう努力しましょう。
クライアントと制作側では、制作後の修正に関して認識の違いが発生しがちです。特に初めての取引の場合は、検収時点でクライアントがOKを出していても、リリース後に運用してみて修正点を指摘されることも多々あります。そのためにも最初の契約段階で、修正など保守契約書の内をクライアントに説明し、契約を交わすことが望ましいと言えます。ただし、保守契約を締結せずに、修正が必要になった段階で個別見積もりを提出して、その都度対応する方法もあります。
著者:水野良昭
JWDA(一般社団法人日本ウェブデザイナーズ協会)理事。1968年東京都生まれ。商社7年勤務後、シリコンバレーに渡米。帰国後、自治体WEBサイトを構築。その後ISPにてグループウェアASP商品化。第13回 KSPベンチャー・ビジネススクール 準優秀賞受賞。同ビジネスプランにて、オンラインデスクトップ株式会社を設立。