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CEATEC JAPAN 2010レポート 第2回

ケータイ向けの新放送!? マルチメディア放送とは?

2010年10月05日 22時12分更新

文● ASCII.jp編集部

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生放送ステージを兼ねたmmbiブース

生放送ステージを兼ねたmmbiブース。アイドルグループ「アイドリング!!!」による生番組のステージもあり、中継時は黒山の人だかりとなる

 幕張メッセで5日から開催中の展示会「CEATEC JAPAN 2010」では、2012年にサービス開始を予定している新しい放送サービス「マルチメディア放送」がブースを出展し、サービスの説明やデモを披露している。この新しい放送サービスは、いったい何ができるのか? デモ展示の様子を交えてレポートしよう。


ケータイを軸に蓄積型とリアルタイム型を併用

mmbiのユーザーインターフェースデモ。左は携帯電話機(N-04B)、右はXperiaを使用している

 マルチメディア放送(以下mmbi)は、地上アナログテレビ放送が使っていたVHF帯(207.5~222MHz)の跡地の一部を使う、新しい放送サービスである。携帯電話やスマートフォンなどの携帯型端末を主な受信機器とする放送サービスという点では、「今のワンセグ放送と何が違うんだ?」という疑問がわくのも当然だ。

 mmbiのサービスには、以下の特徴がある。リアルタイム型放送を除けば、いずれもワンセグ放送にはない特徴だ。

蓄積型放送(ファイルキャスティング)
放送を使った番組のダウンロードサービス。端末に番組を保存して、いつでもどこでも視聴できる。
リアルタイム型放送(ストリーミング)
一般的なテレビ放送と同じリアルタイムの放送。ワンセグよりも高画質。
コンテンツレコメンドサービス
番組の視聴履歴からユーザーの好みを学習し、それに合わせたコンテンツを勧めたり、自動保存する。
全国一斉放送
地上デジタル放送と異なり、日本全国どこでも同じ放送が見られる全国ネットワーク。

 mmbiによる放送では、地上デジタル放送で使われている「ISDB-T」を発展させた「ISDB-Tmm」方式を採用している。映像符号化にはH.264(Baseline、Main)を使い、解像度は720×480ドット、最大フレームレートは30と、ワンセグよりもかなり高画質になっている。

 ISDB-Tmmを採用する利点については、ワンセグやフルセグの地デジ受信機との、回路やソフトウェアの共通化が容易という点も挙げられている。地デジのUHF帯とは周波数の異なるVHF帯を使うため、アンテナは単純にそのまま流用というわけにもいかないだろうが、携帯電話に内蔵可能な小型チューナーが作りやすいのは大きな利点だ。

 蓄積型放送は、放送を受信できない環境で使われることも多い携帯端末に適したサービスだ。蓄積データは端末のストレージ内に保存される。受信時にパケットの欠落が生じることも想定して、欠落分を通信で補完して正常なデータにする機能も備えている。

 蓄積型と並んで興味深いのがコンテンツレコメンドサービスで、視聴履歴を元にお勧め番組を提示するという、テレビレコーダー的な機能を標準で備える。リアルタイム型も単に番組を時間に合わせて放送するだけでなく、通信機能を持つ端末での受信を利用した機能を用意できる。会場でのデモでは通販番組を例に、視聴者数や購入者数に応じて、商品の価格が変わったりするといったリアルタイムならではの機能が披露されていた。

mmbiのデモ 基本画面

mmbiのデモ。こちらが基本画面で、中央の映像はリアルタイム放送をイメージしている

保存された番組中のお勧め一覧

保存された番組中のお勧め一覧。ジャンル別の一覧表示などもある

保存番組の再生

保存番組の再生。通販番組では直接通販サイトへ移動する機能を実現できる

番組に関するつぶやきを閲覧

番組に関するつぶやきを閲覧、投稿する機能も用意されるようだ

 会場で披露されたデモでは、NTTドコモの最新モデル携帯電話機やXperia SO-1Bでmmbiを受信しているという想定で、アプリケーションを実体験できるデモが用意されていた。番組の画質が良好なほか、番組内から直接通販サイトに飛べたり、ツイートをつぶやけたりと、通信端末ならではの機能がイメージされている。

 携帯電話やスマートフォン以外での展開も当然視野に入れている。例えば、無線LAN機能付き携帯電話機に蓄積したコンテンツを、無線LAN経由でパソコンに送信して視聴したり、チューナー搭載の無線LANルーターを使い、無線LAN経由でパソコンやテレビに配信するといった、柔軟な使用が可能な点もワンセグとは大きく異なる。

携帯端末以外での使用の説明図

携帯端末以外での使用の説明図。受信機以外での視聴を可能とするなど、地デジやワンセグよりも柔軟な運用ができるようだ


携帯端末に適した番組ラインナップが鍵か

電子書籍コンテンツを想定したデモ

iPadにダウンロードした電子書籍コンテンツを想定したデモ。直接受信できない端末にもコンテンツを送れるようだ

電子書籍端末に、横の携帯電話からコンテンツを配信したイメージのデモ

こちらは富士通開発の電子書籍端末に、横の携帯電話からコンテンツを配信したイメージのデモ

チューナーを内蔵したタブレット端末を想定したデモ

チューナーを内蔵したタブレット端末を想定したデモ

 サービス開始までのスケジュールを確認してみよう。現時点では、事業会社である(株)マルチメディア放送が受託放送事業者(放送局免許を持ち、実際に放送を行なう事業者。CS放送ならスカパーJSAT)としての認定を9月に受けたばかりである。今後は委託放送事業者(各チャンネルを運営する事業者)の認定の取得を目指しつつ、コンテンツを提供するパートナー企業を拡大し、2012年4月のサービス開始を目指して準備を進めている。

 放送エリアとしては、サービス開始初年度は東名阪を中心に世帯カバー率約73%を、3年目には全国主要都市を含む世帯カバー率約91%を目指すとしている。mmbiには株主として、フジテレビや日本テレビ、TBSにテレビ朝日などの在京キー局、スカパーJSAT、そしてNTTドコモが名を連ねている。

サービスエリア展開の予想図

サービスエリア展開の予想図。2015年には大半の都市部で見られるようになりそうだ

 また協力会社としては、ウォルト・ディズニーの日本法人やアニマックスブロードキャストといった各チャンネルを持つ事業者やテレビ東京、NECや富士通など電機メーカー、さらにはJTBやミクシィといった企業の名が挙げられている。これらの企業からの番組やサービス、あるいは端末提供は期待できるだろう。

 ただ、既存の地上波やCS/ケーブル放送と同じ番組を流すだけでは、モバイル端末をターゲットとしたmmbiにマッチしたコンテンツ展開とは言えない。モバイル端末に適する番組とサービス制作という新しいチャレンジが必要となるだろう。サービス開始の2012年4月が待ち遠しい。

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