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クラウド時代を「Express5800/ECO CENTER」で乗り切れ! 第3回

省電力・省スペースを追求し続けたレンタルサーバー事業者が行き着いた「答え」

アキバ系プロックスがNEC製サーバーに乗り換えた理由

2010年09月29日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「これ以上小さいサーバーは作れないと、発注先が音を上げてきたんです」。一貫してレンタルサーバーにこだわるプロックスシステムデザイン(以下、プロックス)の取締役 IXENT事業本部長を務める野村多聞氏は、NEC製Atomプロセッサー搭載サーバー採用の理由をこう語る。13年の長きにわたり、省電力と省スペースを追求し続けた同社が行き着いた1つの答えとは?

13年前からデータセンターの電力や熱と戦ってきた

 都内にデータセンターを持つプロックスは1997年の創業以来、一貫してシンプルなレンタルサーバーをサービスとして提供してきた。証明書やドメイン名取得・管理などオプションは数あれど、基本のサービスは手軽に使える「E-server」とユーザー所有のハウジングサービス「E-server Advance」の2つだけ。流行に流されずこだわりの一品だけを出し続ける老舗のラーメン屋のようだ。

 同社の主力サービスE-serverは月額7245円で物理サーバー1台をまるごと借りられるという魅惑のサービス。初期設定もセキュリティを意識した設定が施され、ユーザーの操作も容易な管理ツール「Webmin」を採用している。「法人のお客様がほとんどですが、専任のIT管理者を置いていらっしゃらないところが多いですね。そのため、使い勝手は重視しています」と、代表取締役社長 古山浩之助氏はサービスのポリシーをこう説明する。

プロックスシステムデザイン代表取締役社長 古山浩之助氏

 この古山氏と二人三脚でサービスを切り盛りするのが、取締役の野村氏だ。野村氏は1997年の会社設立時からレンタルサーバービジネスを担当し、グリーンITという言葉が生まれるはるか前から、データセンターの電力とIT機器の集積密度、そしてコストに関して長らく頭を悩ませてきた。この結果として、同社が採った選択が「サーバーの自作」である。「1997年当時、PCサーバーは非常に高価でしたが、PCのパーツ自体は安価でした」(野村氏)とのことで、本社の近くにある秋葉原の業者に頼んでレンタルサーバー向けのハンドメイドサーバーを開発することにした。

プロックスでは長らく自作のサーバーをレンタルサーバーサービスで使っていた

 できあがったサーバーは、「当初はスペースを取るのでケースにも入れませんでした。グーグルみたいにラックに直接マザーボードを載せたような感じ」(野村氏)という、まさに自作魂溢れたデータセンター仕様。こうしたハンドメイドサーバーをラックに格納し、空調機とエアサーキュレーターでサーバーをひたすら冷やして、電力消費や熱、収容スペースといった課題と戦ってきた。こうした不断の努力をひたすら続けて実現したのが、月額1万円を切るレンタルサーバーサービスだったわけだ。

自作派プロックスがNECサーバーを導入した背景

 こうして自作サーバーを軸にレンタルサーバーサービスを展開してきた同社にも転機が訪れた。自作サーバーの小型化が限界に達したのだ。省電力・省スペースを目論んで開発を進めていたAtom搭載のサーバーにおいて「これ以上小さくしようと思うと、専用部品が必要になり、電源はどうしても厚みが出てしまうと、発注先の業者が泣きを入れてきたのです」(野村氏)という事態が発生したのだ。

 部品の調達も難しくなってきた。自作サーバーを使っている都合上、サーバーの調達はCPUのライフサイクルに大きく左右される。つまり、CPUが入手できなくなると、次世代のCPUを載せたサーバーへの入れ替えが必要になるわけだ。その点、「最近はCPUのライフサイクルが短くなってきたので、マザーボードの選定も大変になってきました」(野村氏)とのことで、プロックスでも自作サーバーの限界がいよいよ表面化してきた。

プロックスシステムデザイン取締役 IXENT事業本部長 野村多聞氏

 こうした悩みを抱えていた野村氏に、NECからもたらされたのがAtomプロセッサー搭載サーバー「Express5800/E110b-M」発売の案内であった。3Uのエンクロージャに最大20台のAtomサーバーを搭載できるExpress5800/E110b-Mは、サーバーの入れ替えを早急に行なう必要があったプロックスにとってまさに「福音」とも呼べる存在。野村氏は「60台で20A未満という省電力性能は、すごいインパクトでした。6月に移設した新しいデータセンターでは20A電源が3系統引けるので、従来のAtomサーバーの倍にあたるラックあたり180台が入れられます」と省電力・省スペースを評価し、製品にいち早く飛びついたという。そして、最寄りの秋葉原にあるNECのショールーム「クラサバ市場」において実機に触れ、説明員の話を聞き、導入を決めた。そして製品発売後、「E-server」では徐々に自作サーバーからExpress5800/E110b-M への移行を進めている。

安価なAtomサーバーサービスを提供できるメリット

 既存の自作サーバーとExpress5800/E110b-Mを比較すると、やはり部品調達やサポートなどが大きく異なるという。「(NECのサーバーに切り替えたことで)CPUやメモリなどの調達状況を確認する手間がなくなったので、安心感が非常に大きいです。あと、今まではパーツレベルのサポートしかなかったので、3年間の無償保証もありがたいですね」と高い評価を与えている。メーカー製のサーバーの導入により、こうした負担が軽減されることは、ランニングコストの大きな削減につながるという。

 懸念されがちなAtomプロセッサーのパフォーマンスに関して野村氏は、「以前からAtomは使っていたので不安はありませんでした。いろいろテストしてみましたけど、CPUよりメモリの量の方がパフォーマンスへのインパクトがあるようです」と語る。それよりも入門編となるAtomのレンタルサーバーを、妥当な価格で提供できるメリットのほうがはるかに大きいという。

 古山社長は、「個人ユーザーさんは無料のサービスに移ってしまいましたし、中小企業はコストがかけられないところがほとんどです。この不況の時期には、安いところに移るのではなく、レンタルサーバーの利用自体を止めてしまうお客様すらいらっしゃいます」と現在の顧客動向についてこう述べる。こうしたなか、とにかくコストを押さえつつ、使いやすいサーバーを提供するE-serverの存在意義は大きい。そしてそのサービスの基盤となるExpress5800/E110b-Mの存在意義も、やはり大きいのだ。

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