9月2日、毎年、秋の恒例となるiPodシリーズの新製品が発表された。今年の目玉は、何と言っても第4世代にしてようやくカメラが付いたiPod touch……と思いきや、実はiPod nanoも相当面白い進化を果たしていた(Apple Storeで見る)。
結論から言えば、通勤やジョギングのお供として純粋に音楽プレーヤーが欲しい人なら迷わず買いだ。何が変わって、どんな機能が便利なのか。実物をじっくり触ってみたので、レビューをお伝えしよう。
スペック表では劣っているが……
iPod nanoといえば、iPodシリーズの売れ筋モデルだ。日本でiPodが普及するきっかけとなったiPod miniの後釜として2005年にデビューし、以来、毎年1回、秋にモデルチェンジしてきた(第1/第2世代、第3世代、第4世代、第5世代)。最新モデルは第6世代となる。
しかし、正直に言えば、第6世代iPod nanoのニュースを聞いたときの第一印象は「えー!?」というマイナスの驚きだった。
驚いたのは、伝統のクリックホイールも、第5世代で採用したカメラも捨てるという大胆なリニューアルを果たしたこと。ついでにビデオ再生、カレンダー/住所録の表示、ゲームなどの機能もなくなって、仕様表だけで見れば「退化」としかいいようのない状況だ。
第5/第6世代でのスペック比較
第5世代 iPod nano |
第6世代 iPod nano |
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容量/価格 | 8GB/1万4800円、 16GB/1万7800円 |
8GB/1万3800円、 16GB/1万6800円 |
ディスプレー | 2.2インチ/240×376ドット | 1.54インチ/240×240ドット |
バッテリー駆動時間 | 最大24時間 | |
充電時間 | 約3時間 | |
写真表示 | ○ | |
ビデオ撮影 | ○ | × |
ビデオ再生 | ○ | × |
アドレスブック | ○ | × |
iCalカレンダー | ○ | × |
ゲーム | ○ | × |
センサー | 加速度センサー | |
スピーカー | ○ | × |
インターフェース | ヘッドホンジャック、Dockコネクタ | |
本体サイズ | 幅38.7×奥行き6.2×高さ90.7mm | 幅40.9×奥行き8.78×高さ37.5mm |
重量 | 36.4g | 21.1g |
そしてiPod shuffleと同サイズにまで小型化されたボディーには、マルチタッチに対応した液晶ディスプレーを搭載した。マルチタッチというと、iPhoneやiPod touchのようなモバイルにしては大きい液晶で採用してきた機能だ。それらと比べてあまりに小さいiPod nanoの液晶を見ると、「このサイズでホントに使いにくくないの?」という不安が先立ってしまう。
iPod nanoから剥奪したカメラがiPod touchに搭載されたこともあって、「アップルは今後、iPod touchをメインに据えて、iPod nanoは力を抜いていくのかな?」と何となく思い込んでしまったのだ。
しかし、iPod nanoの実物をじっくり触ってみると、その印象が一変した。われわれ(というか筆者)は、ついつい機能の多寡で製品の優劣を判断してしまいがちだが、その見方はときとして偏見を生んでしまう。これは余計な機能をそぎ落として、音楽プレーヤーとして進化を果たしたものだ。
iPodとは何だったのか──。アップルがじっくり見つめ直してその原点に立ち返った……かどうかは分からないが、とにかく意義のあるフルモデルチェンジだったとは感じた。