著名作家陣で固めた電子雑誌「AiR」がリクープラインを超えたと発表された。電子書籍ならではのコスト削減術とは? 発行会社代表の堀田純司氏に聞いた。
前回取り上げたブックフェア(7月7日~10日)に合わせて、電子書籍関係各社の発表が相次いだ。対照的に出展も行わなかったAmazonだが、7月19日の発表では、米Amazon.comでの過去3カ月間のハードカバーの販売数を電子書籍が上回った(過去1カ月では1.8倍)ことを明らかにした。
あくまで、比率しか発表されておらず、電子書籍の実売数は不明だ。Kindle自体の台数や、iPhone/iPad向けアプリのダウンロード数も公表されていない。しかし、特に北米では重くて分厚いハードカバーに限定した話とはいえ、紙の本の販売数を電子書籍版が上回ったというのはマイルストーンとなる出来事だ。
一方、この連載でもたびたび指摘しているように、日本での電子書籍のライブラリはまだ充実しているとは言い難い。iPadを買ったものの、iBook Storeの日本語版書籍の品揃えにがっかりしたユーザーも多いはずだ。対岸の火事のように米Amazon.comのニュースを眺める出版関係者もいたかもしれない。
ところが、日本でも個々の事例を見ていくと、リクープラインを越えた(=初期コストを利益が上回り始めた)という話が聞かれるようになった。そのひとつが、7月26日に正式版の発売が始まった電子雑誌「AiR(エア)」だ。
「AiR(エア)」は制作コストを如何に抑えたか?
「AiR」の最大の特徴は、既存の出版社や取次を介さず、書き手が直接電子書籍を出していることだ。AppStoreでの販売となるため純粋な意味での直販ではないが、有名な著者陣が参加しており注目を集めている。

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