それは「ディスクマガジン」にも似て
iPadアプリとして「AiR」を読んでいて、なんだか懐かしい感覚に捕らわれたのは筆者だけだろうか?
「AiR」には様々なジャンルの作家・クリエイター達が賛同し、作品を寄せている。出版や取次流通を介していないという新規性がありながらも、すでにそのジャンルでは実力を認められた作り手の作品を楽しむことができる。
筆者が思い起こしたのは、パソコンの黎明期に一世を風靡したディスクマガジンだ。たとえば、株式会社コンパイルが1988年から2000年まで発行していた「ディスクステーション」。
ゲームプログラムやCGなど多種多様なコンテンツが収録され、パソコンで読み込むまで何が出てくるかわからない、といったわくわく感は、「AiR」のような電子雑誌に通じるものがある(ちなみに、「電書」という呼称を提唱する、立命館大学映像学部教授の米光一成氏はコンパイル出身だ)。
堀田氏は、「AiRは雑誌に近い形態を取ることで、幅広い読者の獲得を狙うだけでなく、大物作家の作品の隣にデビューしたての新人の作品が並ぶような場になることも目指していきたい」と語る。今のところ、有名作品・作家の電子書籍化が話題となることが多いなかで、「AiR」のような電子雑誌の存在は、電子書籍時代に即した書き手の発掘という面からも貴重となってくるのではないだろうか。
パソコンの黎明期に、利用者層の拡大と作り手の育成において一翼を担ったのがディスクマガジンだ。「AiR」は電子書籍時代を切り拓くメディアとなり得るだろうか? 今後の展開に注目していきたい。
著者紹介:まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、ゲーム・映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+iPhoneでGoogle活用術」など。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは@a_matsumoto
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