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編集者の眼第13回

メディアで話題になりやすい商品の条件とは? (1/2)

2010年06月30日 19時18分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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 Twitterのようなソーシャルメディアに注目が集まっている。「低コストで利用できる新たな集客ツール」という触れ込みで紹介されることもあるが、ソーシャルメディアのユーザーが多くなれば、ただ参加するだけでは集客できない。

 もちろん、テレビや新聞、雑誌やWebメディアなどの既存メディアでも事情は同じだ。ニュースリリースを送ったからといって取り上げられる保証はどこにもない。だが「運がよければ取り上げられる」ではギャンブルと同じ。ソーシャルメディアでも既存のメディアでも、多くの人の関心を集めて話題になるには「ストーリー」が必要だ。

「話題」の基本はストーリー作り

 上手な話、思わず聞き入ってしまう話には「ストーリー」がある。逆につまらない人の話には「ストーリー」がない。この場合の「ストーリー」とは、 プロットと話者同士の関係性である。たとえば、話が下手な人同士の会話は、だいたいこんな感じだ。会社の飲み会が終わって、普段余り話したことのない人と 帰路が一緒になった電車の中、という状況を思い浮かべて読んで欲しい。

A Bさんのご自宅はどちらですか?
B 相模大野です。
A そうですか。
B Aさんはどちらですか。
A 私は代々木上原です。
B そうですか。では10分くらいで着きますね。
A ええ、すぐ着きます。
B ……
A ……
(間もなく代々木上原です)
A ではお疲れ様でした。
B はい、お疲れ様でした。

 この会話の問題は、「ストーリー」がないことだ。書いただけでいたたまれない気分になったので、同じ状況で、もうちょっとマシな場合も考えてみた。

A Bさんはいつもこの電車で通勤しているんですか?
B ええ、Aさんも?
A 私もなんですけど、いままで会いませんでしたね。
B 同じ会社で出社時間も似たようなものなのに不思議ですね。
A あ、もしかすると私の乗車位置のせいかもしれないです?
B え、どういう意味ですか?
A うちの会社って、新宿駅の中程で下りると階段の位置がちょうどいいじゃないですか。
B ええ、私はいつも6両目と決めていますよ。
A あの辺りって、朝すごく混みませんか。
B 混みますよね、つり革を掴まなくても体重支えられますよ。
A  7両目の方が断然空いているって知ってました? 私そっちに乗ってるんです。
B 1両違うだけでそんなに違うものですか?
A ええ、途中駅の階段の位置の関係で、7両目が穴場なんです。今度試してみてくださいよ。
B へー、今度試してみますよ。
A あ、私、代々木上原なので、そろそろ降りますよ。Bさんはどちらまで?
B 相模大野までです。
A そうですか、まだちょっとかかりますね。ではお疲れ様でした。
B はい、お疲れ様でした。

 2つの会話の違いは、プロットと話者同士の関係性で説明できる。まず、ぎこちない会話にはそもそもプロット(筋書き)がない。

 プロットで最も重要なのが、現実世界の「法則」(常識)を何かひとつ入れ替える「設定」だ。一緒の電車に乗っている以上、どこかの駅で降りるのは当たり前であり、降車駅が相模大野だろうが代々木上原だろうが、世界を設定することにはならない。ぎこちない会話に「設定」を持ち込んだのが以下の例だ。

A Bさんのご自宅はどちらですか?
B 相模大野です。
A そうですか。
B Aさんはどちらですか。
A 私は吉祥寺です。
B えぇっ! 吉祥寺はこの電車では行けませんよ。
A 知ってますよ。今夜はBさんの家に泊めてもらおうと思いまして。
B はあ?

 世界の法則を何かひとつでも入れ替えると、聞き手の心の中に疑問が生じる。「いったいどういう理由で?」という疑問を取っかかりに、興味を持ってもらうのが「設定」の役割だ。もうちょっとマシな会話として出した例では、「本来は6両目が最適なはずなのに、Aさんは7両目に乗車している」という設定があるために、BさんはAさんの話に興味を持ったわけだ。

 話者同士の関係性も重要だ。お互いが自分自身のことを話してしまうと、たいていの会話はつまらなくなる。テーブルをはさんで椅子に座り、お互いのことを話すのは、何だかうまくいかないお見合いのようで想像するだけで気恥ずかしい。一方、AさんとBさんが乗車位置という共通の話題について会話している例は、自然な感じがする。ちょうど横並びの椅子に座って、壁に掲げられた絵について会話するように、ある話題について意見を述べるのが会話をスムーズにするコツだ。そこで、ぎこちない会話に「話者同士の関係性」を持ち込んだのが以下の例である。

A Bさんのご自宅はどちらですか?
B 相模大野です。
A 相模大野ですか。駅前の角を曲がったところの喫茶店ご存じですか?
B ああ、喫茶○○ですね。どうしてご存じなんですか?
A 昔、うちの妻が学生のころ、よく○○で待ち合わせしたんですよ。

 Aさんが「相模大野」というキーワードを、共通の話題に切り替えることで、会話のぎこちなさがなくなる。話者同士を対立させるのではなく、共通の話題に対して向き合うような関係性を作り出すのも、ストーリー作りでは重要だ。

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