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ネットで誰でも「紙の文庫」出版できます ブックス文庫の挑戦

2010年08月06日 12時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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紙という「ジョーカー」を使ったゲームをしてほしい

―― そこで気になるのは「編集者」です。多くの人に読まれるためには、編集という能力も必要だとも思うんですよ。ただのブログを読みやすくするためには「編集者」という職人が必要になると思うんですよね。脳みそを整理してくれるような。

松本 たとえばこれ(岡田利規さんの文庫)は天然文庫という、編集者がつくったレーベルとして出しています。BCCKSでつくれる文庫の中で、ためしに。「STUDIO VOICE」元編集長と「BARFOUT!」元編集長、「relax」元副編集長の3人でつくってます。

―― 次から次に90年代のビッグネームが! するとBCCKSの中では、編集者も作家と同じ位置に担保されるわけですか?

松本 むしろこれからのBCCKSは「編集部」をつくれるようにしたいんですよ。編集や閲覧が情報のフィルタリングになっていく、そんなイメージで考えています。たとえば「かっぱ文庫」という名前のグループをBCCKSにつくるとしますよね。作家を集め、ユーザー同士が集まって編集をする。コミュニティーサイトのような形で「編集会議」ができるわけです。そうして作れたかっぱ文庫を売りたくなったら売ればいいと。

―― 「モノ」ができることで、お金を払うきっかけができたと。そうなると、販路が気になります。気になっていたのがQRコードなんです。モバイルといったらケータイ課金。もしかしたら月々のお支払いで本を「買える」ようにするのかなと思ったんですね。

松本 まだそのモデルはつくっているところなんですよね。まずは販路を広げたいと思って。本が買えるのは、ウェブとここ(VACANTのこと)、それと数店のみ。QRコードは、あくまで電子ブックでもあるという象徴として、記号としてつけているところが大きいですね。

―― たとえば「アマゾンで売れる」ということにつながると、いま出版社で色々なものをくすぶらせている編集者と作家たちは目の色を変えるんじゃないかと思うんです。

松本 それもなんとかしたいと思っています。(紙の本として流通するのは)高コストではありますが、電子書籍とはまったく違う強みがあるので。紙というのは「ジョーカー」だったわけですよ。色んなプラットフォームがある中、紙というジョーカーがある。ババ抜きみたいなものですよ。たった1枚のジョーカー。その力がある限り、これからも「本」の中で、三分の一くらいは「紙の本」が残ってくるんじゃないかと思ってるんです。

 その意味、iPadの「不思議な国のアリス」とかは、考え方がちょっと違うだろうと思うんです。これまでの「リッチメディア」って言葉はあまりピンと来なかったんですよね。本をやるなら、文字と写真があればいい。むしろ、つくる構造そのものがリッチなのがリッチメディアなんじゃないか。だれでもきれいな本がつくれる。それがリッチってことなんじゃないかと。たとえその出力先が、iPhoneでもiPadでもKindleでも。そして紙の本でも同じことです。

 ま、言うのは単純ですけどね。長かったですよ。苦労しました。ようやくここまで来たんです。これからですよ。まだ始めたばかりですから。

■ブックス文庫 近日中にモニター募集を開始!

 ブックス文庫は現在、β版のテスト中。とはいえ一般ユーザーが使える日はそう遠くない。サーバ負荷テストを兼ね、50名のモニターを募集予定だ。条件はBCCKS上からオンライン発注ができること。詳細は近日、公式サイトで発表予定だ。いつか自分の本を作ってみたかったという方はぜひご応募を!

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