スマートフォンでキャリアとメーカーの関係に異変?
VerizonはNexus Oneの代わりに「Droid Incredible」を、Sprintは「EVO 4G」をラインナップに加える。ともにHTC製のAndroid携帯電話だ。Droid IncredibleはNexus Oneと同様、Android 2.1ベース+Snapdragon搭載機だが、カメラのスペックなどNexus Oneを少し上回る(Googleは「Nexus Oneのいとこ」としている)。
だが、VerizonがNexus OneではなくDroid Incredibleを選んだのは、単にスペックで上回るからだけではないだろう。Googleの提示したビジネスモデル(Web直販+マルチキャリア)を受け入れられなかったのではないか。
キャリアを介さずメーカーが直販するとなると、キャリアは支配力や影響力を弱めることになる。モバイルのビジネスモデルはiPhone登場により、すでに変化しつつある。iPhoneでアップルは、ブランド力と消費者の強いニーズを背景に、メーカーがキャリアを指定するという動きに出た。そしてiPhoneは成功した。Nexus Oneのマルチキャリアモデルは、これをさらに進めてしまうことになる。
スマートフォンが新たに切り開いたアプリケーションビジネスではすでにメーカーが主導権を握っており、キャリアは自分たちのポジショニングを問い直されている。
Nexus Oneとは関係なく
拡大を続けるAndroidのシェア
Nexus Oneでは予想どおりにいかなかったかもしれないが、Nexus OneだけがGoogleの狙いではない。Android端末という意味では、HTC、Motorola、Samsung、Sony Ericssonと多数の端末メーカーが採用し機種は増えている。Androidマーケット上のアプリケーションも3万8000本を上回った。
Nexus OneはAndroidからみると1つの端末にすぎない。さらにいうならばNexus Oneが成功してしまった場合、他のAndroidメーカーとの関係にヒビが入りかねない。
実際、Androidは着実にシェアを増やしている。調査会社のNPDが5月10日に発表したアメリカのスマートフォンOS市場調査によると、2010年第1四半期(1~3月)におけるAndroidはシェア28%を獲得し2位、iPhoneの21%を上回った(なおトップはBlackBerryで36%)。
好調なAndroidだが、気になる点もある。まずは特許問題だ。3月にアップルがHTCを提訴し、4月にはMicrosoftがHTCと特許ライセンス合意を結んだ。ともにAndroid携帯電話に関するものだ。Androidが特許面でリスクがあるとなると、エコシステムには打撃となる。
もう1つが、Androidの分裂だ。複数のバージョンを搭載したAndroid端末が市場に存在し、アプリケーション互換性の懸念がうまれている。
Googleは5月19日から開発者向けカンファレンス「Google I/O」を開催する。ここでは「Android 2.2」など最新情報が出てくることが期待されている。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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