このページの本文へ

IBM Systems Live 2010完全レポート

スマートなITインフラを支える技術を完全網羅

2010年05月10日 09時00分更新

文● 渡邉利和

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

メインフレームと仮想化の関係

日本アイ・ビー・エム 執行役員 システム製品事業担当 藪下 真平氏

 基調講演に続いて、IBMのハードウェア製品の最新技術を紹介する「クラウド時代をリードするIBMのスマートなシステム」と題する講演が、同社の執行役員 システム製品事業担当の藪下 真平氏によって行なわれた。もっとも、藪下氏はいわば司会者の役回りに徹しており、紹介された「システムz(メインフレーム)」「Power Systems(UNIXサーバー)」「システムx(IAサーバー)」「ストレージ」の4分野の製品技術について、それぞれ担当事業部長が説明を行なうというスタイルになっていた。

 まず初めは、システム製品事業 システムz事業部長の朝海 孝氏が登壇した。いわゆる「メインフレーム」であるシステムzは、ことあるごとに「旧世代の象徴」のようにいわれるが、朝海氏はまずIBMのメインフレームの歴史がコンピュータの進化史そのものに重なることを指摘し、「ユーザーニーズと、その時点での旬のテクノロジーを採り入れて進化してきた」のがシステムzである、とした。

日本アイ・ビー・エム システム製品事業 システムz事業部長 朝海 孝氏

 また、IAサーバーの仮想化に注目が集まる現状に対してシステムzの仮想化技術のアピールが足りなかったということを「システムzも仮想化に対応しているんですか?」という質問を受けたというエピソードで紹介した。もちろん、現在のサーバー仮想化技術が、メインフレームで40年以上前に開発された技術を安価なIAサーバー上でも利用できるようにしたものだ、という流れをまるで無視するような質問だ。しかし、そういう質問が出てくるということ自体が、システムzの技術内容が一般には理解されないものになりつつあることの反映ではあるだろう。

 ともあれ、現時点においても仮想化技術に関してもっとも先進的な機能を実現しているのがシステムzであることは間違いない。その例として紹介されたのが、IRD(Intelligent Resource Director、区画ワークロード管理)だ。仮想化された複数の区画に必要なリソース量を動的に配分し、ワークロードに応じて柔軟に増減できる。さらに、I/Oリソースの割り当て変更も可能だ。

システムzのIRDの機能イメージ

システムzによるサーバ統合の成果

 このあたりは、プロセッサーの演算性能だけは潤沢になってきたが、メモリやI/O性能の不足に悩まされることが珍しくないIAサーバとは一線を画しており、OSやハードウェアがすべて仮想化前提で設計されている強みでもある。クラウド時代を迎え、高額かつ高性能なハードウェアを多数のユーザーで共有する、というかつての集中型モデルに回帰する傾向が見えてきた現在、システムzの利用価値が改めて見直されることもありそうだ。

新登場のPOWER7をアピールするPowerSystems

 続いて、RISC/UNIX系サーバであるPowerSystemsについて、同社のシステム製品事業 パワーシステム事業部長 理事の高橋 信氏が説明した。同氏は、まず最新世代プロセッサーとなるPOWER7の技術から説明を始めた。

日本アイ・ビー・エム システム製品事業 パワーシステム事業部長 理事 高橋 信氏

 現在のプロセッサー設計のトレンドにのっとり、POWER7でもマルチコア化が進行しているが、単にマルチコア化するだけでは性能向上には直結せず、潜在能力を引き出すためには周辺でさまざまな技術革新が必要となると同氏は指摘する。IBMでは、キャッシュ技術の革新(eDRAM)、新しいメモリ技術(ソケット当たり毎秒100GB以上)、新データ作動伝送技術、データ一致性制御方式の改革、といったイノベーションを組み合わせることでマルチコア化されたプロセッサの潜在性能を引き出し、5倍以上の性能向上を達成したという。

POWER7に投入されたさまざまな高速化技術の例

POWER7のワークロード最適化システムの動作イメージ

 POWER7は8コアのプロセッサで、チップ上に32MBのL3キャッシュを搭載する。このリソースを、ワークロードの特性に合わせて「大規模並列処理型」と「大規模共有メモリ型」に切り替えて使用できる。大規模並列処理型では、8コアすべてを稼働させ、L3キャッシュは各コアごと4MBのローカルキャッシュとする。大規模共有メモリー型では、演算能力はさほど必要ないため半数の4コアをオフにしてコア当たりのL3キャッシュ容量を倍増させた上で全領域を4コアからアクセス可能な共有キャッシュとして利用する。さらに、今年の後半にはハイエンド/ローエンド両方で新製品の発表が予定されているという。

(次ページ、IAサーバーの限界を打破するeX5)


 

カテゴリートップへ