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Azureの隠れた力「ブランド力」にも注目すべき

ベンチャー企業がAzureする、これだけの理由

2010年02月25日 09時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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昨日は、大規模なWindows Azureの導入事例を紹介したが、Microsoft Tech・Days 2010の展示会場では、ベンチャー企業がWindows Azure上のソフトウェアを紹介していた。今や大規模案件ばかりが取りざたされるクラウドだが、その原点にたち帰って、数人規模の開発社が大規模プラットフォームを使い、ワールドワイドに成果物を問う様をお届けしよう。

テラス

展示ブースにほど近いテラス。参加者が思い思いにくつろいでいた

世界で3社しかない“PC自爆”ソリューションも
Windows Azureを使って世界展開

ワンビのブース

ワンビのブース

 ワンビの「トラストデリート」は、PCの盗難や紛失に遭遇した場合に、あらかじめ指定してあるデータを消去するサービスだ。昨年富士通がPHSモジュールを組み込んだ「リモート消去PC」を発表したが(関連記事)、トラストデリートの場合はソフトウェアのみでデータ消去を完遂する。

 トラストデリートの仕組みは、PCにあらかじめインストールされているクライアントに対して、サーバーからデータ消去を命じるというもの。消去対象データには、フォルダやファイル名、拡張子のほか、Windows Desktop Serchのインデックスを使うことで、特定の文字列を含むファイルも指定できる。

サーバ側の設定画面(左)では、どのようなファイル/フォルダを消去するかを指定できる。右の写真はトラストデリートのクライアント。法人使用による一括インストールも可能なため、ユーザーが見ることは通常ないという

 ネットワーク経由で消去命令を送るのであれば、オフライン時にはどうするのか? その場合には、オフライン時には特定のファイルを不可視化する、といった機能を使うことができる。ネットにつないでいない時=トラストデリートの管理サーバーと接続していない時は、重要なファイルは見られないようにするというわけだ。

 トラストデリートではさらに、“時限爆弾”を仕込んでおくことも可能だ。そのPCが一定時間ネットに接続していない場合に消去/不可視化してしまうのである。盗んだ人が焦ってネットワークにつないだ瞬間、Windows Azure上のサーバからの命令が届き、データが消去されるのだ。

 トラストデリートはもともと、専用サーバーやASPによるサービス提供を行なってきたが、このたびWindows Azureにも対応した。それはもちろん、クラウドでもたらされるメリット享受という面もあるが、そのほかにもマイクロソフトのブランドに拠るところも大きいという。トラストデリートはネットワークに依存したサービスであるため、海外の顧客からはネットワークの信頼性に付いての問い合わせもあるのだとか。その際、日本のIDCの名前を言うよりもマイクロソフトの名前を言うほうが、知名度が高い故に安心するのだという。

Windows Azureでコストが一気に下がった
販売管理システム「VEWNTA」

 ステップワイズがWindows Azure上で提供するのは、販売管理システム「VENTA」だ。VENTAは中小企業の販売管理システムから取引先とのWeb発注システムまでを構築する。VENTAの顧客企業は、VENTAによってWeb受注システムを持つことで、それに慣れて利便性を感じた取引先を囲い込むことができるというわけだ。

VENTAの概要(左)と、実際の画面(右)

 同社はもともと、名古屋にて中小企業のコンサルなどを手がけつつ、オンプレミスで動作するVENTAを提供していたのだが、これをWindows Azureに移行した。これによってアプリケーションのスケールアウトといったメリットも生まれるが、驚くのはそのコストダウン率だ。データセンター費用5万円と運用費4万円が、Windows Azureに移行したら1万円以下にまで圧縮されたのだという。もちろん、クラウドかオンプレミスかといった選択は顧客企業のポリシーに拠るところが大きいが、低コストでアプリケーションを配信可能なクラウドの実力が垣間見られる事例だろう。

Windows Azureにpptxファイルを投げると
音声読み上げ付きで帰ってくるサービス

スカイフィッシュ

スカイフィッシュブース

 スカイフィッシュの「リアルナレーターズ with JukeDox」は、PowerPoint(OpenXMLである.pptxフォーマットのみ)の「ノート」部分を音声に変換し、読み上げをしてくれるソフトウェアだ。読み上げを付加したうえでスライドショウに変換すれば、自動プレゼンテーションができあがる。音声は複数の男女の声音を選べるほか、ノートに書いた“台本”にタグ付けをすることで、一呼吸置いたり画面の動きに合わせてセリフをしゃべるといったことも可能となる。

デスクトップ版の編集画面(左)と、概要図(右)

 今夏スカイフィッシュは、リアルナレーターズ with JukeDoxのナレーション音声付きスライドショーファイル作成機能をWindows Azure上で展開し「リアルナレーターズ for クラウド(仮称)」としてサービス提供する予定だ。このサービスでは、顧客がPowerPointファイルをWindows Azure上にアップすると、音声付きスライドショートして出力してくれるというもの。パッケージ版のリアルナレーターズには、声音の指定やタグ付けを行なうためのUIが用意されているが、こうした画面はSilverlightで用意されるという。

 ビジネスモデルは現在検討中だが、サービスチャージのほかポータルへのOEM提供といった可能性も考えられる。スカイフィッシュはもともと、ITによるアクセシビリティやバリアフリー、ユニバーサル関連の事業を理念としている。音声読み上げの技術も、まさにアクセシビリティの技術をビジネス面に応用したものなのである。

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