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「スカパー! HD」のハイビジョン番組録画も可能

10倍録画が驚くほどきれい!? ソニー「BDZ-RX105」速攻レビュー

2010年02月17日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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これが「10倍録画」!? と驚かされる高画質

 いよいよ、10倍の長時間録画の画質を見ていこう。簡単におさらいしておくと、ソニーの長時間録画では、映像に合わせて録画時のデータ配分を最適に行なう「新ダイナミックエンコーダー」と、アニメ、スポーツ、映画などの番組ジャンルに合わせて最適な設定を切り換える「ジャンル別エンコーディング」を組み合わせた「インテリジェントエンコーダー」を使っている。ちなみに、シャープやパナソニックの春モデルで採用されたダブル長時間録画には非対応。長時間録画が行なえるのは「録画1」のみとなる。

ダブル録画時の状態。長時間録画ができるのは「録画1」のみ。「録画2」はDRモード固定の録画しかできない制限がある

従来はSD画質での録画となったERモードだが、今モデルではハイビジョン画質での録画となった。そのため、録画モードは従来と同じ6つ+DRモードとなる

 最長10倍の長時間録画は「インテリジェントエンコーダー」の精度を向上することで実現した。その転送レートはおよそ2.4Mbps。かつての市販DVDでもMPEG2で平均6Mbpsほどだったから、情報量はその半分。解像度はおよそ4倍のハイビジョン録画なのだから、普通に考えれば実用的な映像が録画できるとは思えない。

 ところが、これが驚くほどきれいだったのだ! 録画テストでは、例によってさまざまなジャンルの番組を録画して確認したのだが、いずれもかなりの美しさ。昨年モデルで気になった映像全体の解像度の劣化もかなり抑えられており、ちゃんとハイビジョン画質の映像になっている。それでいて映像の破綻もしっかりと抑えている。これはかなりの進化だと思う。


ニュース番組は、10倍モードで十分

 番組ごとに詳しく見ていこう。比較的相性の良いニュース番組は、スタジオにいるアナウンサーなどを見ても、じっくりと比べないと解像感やディテール感も含めてDRモードとの大きな差を感じない。よく見れば、髪の毛の質感やスーツの布地のテクスチャー感がややザラっとしたノイジーな感じになったり、テロップ文字の輪郭周辺にモスキートノイズが発生したりしているが、ざわざわとノイズが目立つようなことはなかった。

ニュース番組の録画映像。左がDRモードで、右が10倍(ER)モード。カメラがズームアウトして街全体を映したカットで、DRモードでも電線のまわりにノイズが散見される。10倍モードは、路面の微妙に色が変化している部分にMPEGノイズが発生するなど、多少の乱れはあるが、精細感やディテールはほとんどそのままだ


ドキュメント番組は、画面が大きく動かなければ許容範囲内

 続いてドキュメント番組。紀行番組のロケ撮影でも目立ったノイズの発生はなく、解像感も十分。明暗差の激しい映像だったこともあり、10倍モードでは、やや白飛びしがちになるなど、階調のスムーズさがやや失われたように感じる。そのせいかややクッキリ感が劣っているが、見た目の差はほとんどない。このほか、沖縄の海を空撮した番組では、住宅が集中する場所にノイズが出ていたり、画面が大きく動くと解像度感が劣化しがちだが、ゆっくりと動く場面ではノイズも少なく精細感の高い映像だった。

ドキュメント番組の映像。左がDRモードで、右が10倍(ER)モード。多少暗部がやや明るめになり、コントラスト感が若干劣っているが、街並みなどのディテールはほとんど失われていない


映画・アニメは、10倍モードの恩恵大!

 映画では、比較的新しいものと、フィルム撮影の古めの作品を見たが、やはり大きな劣化は感じなかった。映画の場合、コマ数が24コマで、しかもシネスコサイズの場合は上下に黒幕が入るため、純粋な映像部分に費やす情報量はビデオ収録のものと比べて少ない。そのためもあって、案外きれいに録れていると感じた。問題になるのは、フィルムグレインと呼ばれるフィルム独特の粒子感で、これがどうしてもノイズっぽく感じてしまう。粒子もちょっと大きくなったように感じがちで、映像が荒れた印象になるのが残念。ただし、それほどザワザワとノイズが動くことはないので、見づらくはない。

 アニメも24コマで制作されることが多いため、情報量の点では有利だ。アニメ特有のノイズもあるが、いわゆる輪郭周辺のモスキートノイズはうまく抑えられていた。最近のCGを多用した作品でもなければ、10倍モードでもほとんど気にならないだろう。ただし、微妙に色が変化する部分では階調感が劣化し、若干色の変化する部分がMPEGノイズ状にカクカクした感じになってしまう。

アニメ番組の映像。左がDRモードで、右が10倍(ER)モード。クルマの窓の部分には光学処理で光の反射が加えられているが、その影響を受けて車体の色が微妙に変化している部分で階調感の乱れが発見できる


スポーツ映像とクロスフェード効果は苦手

 さて、いよいよ苦手なスポーツ映像だ。今回はちょうど冬季オリンピック開幕直後だったので、ジャンプ競技をはじめとしていろいろと見てみた。さすがに動きの速いシーンでは細かいノイズのチラツキはあるが、従来のように派手にMPEGノイズが発生するようなことは少なかった。動きの速い映像では全体に情報量が不足するようで、解像感はやや甘くなるが、従来に比べるとその差はわずかだ。

 サッカーの試合では、芝目が潰れてしまうなど、その差ははっきりと出てしまった。ただし、従来の長時間モードのように、大面積の芝目が定期的に解像感が変化するようなことはなく、随分と見やすい映像になった。また、動き回る選手の姿もやや甘くは感じられるが、背番号などはきちんと見えるし、特定の選手をクローズアップした映像ではややノイズ感はあるものの、表情などもしっかりと再現されている。

 もっとも気になったのは、異なる映像を重ね合わせながら切り換えるクロスフェードの場面。ここではMPEGノイズの発生による映像の乱れがどうしても目立ってしまう。この手の映像の切り替えは、ドキュメントやスポーツシーンでも多用されるので、そのたびにノイズが気になりがち。そして、スポーツ番組にはつきものの、得点をはじめとするテロップ表示の周辺にはモスキートノイズがもやもやと出ている。背景の映像の動きに合わせてノイズの分布も変化するので、ちらちらと目障りになりがちだ。いずれも圧縮には向かない種類のもので、10倍モードでこれらの解消を求めるのは厳しいが、それ以外の部分がかなり改善されていることもあり、余計に気になってしまった。


長時間モードを多用するなら春モデルがオススメ

 全体として、10倍画質の実力はかなりのもので、正直びっくりした。これならば、視聴用としては十分実用になるし、BDなどに残す場合でも相性の悪いソースを避けるようにすればこれで十分と言ってもいい。例えば、1970~80年代の古いテレビアニメ作品などは50話を超えるような作品でもディスク1枚にまとめて収録してしまえるだろう。

 半年ほどの期間でのモデルチェンジということもあり、大きな進化はないように感じるが、10倍録画の改善は大きな魅力と言える。特に長時間モードを多用しようと考えている人ならば、現在でもギリギリ入手できる昨年モデルよりも、もう少し待って春モデルを選ぶほうがいいと思う。同様に10倍録画を実現したパナソニックの画質の実力も大いに気になるところなので、これもなるべく早くレポートをお届けしたい。


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