このページの本文へ

【所長コラム】「0(ゼロ)グラム」へようこそ

Twitterはコミュニケーション革命なんかじゃない

2010年01月08日 06時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 いまネットの世界で注目されているサービスが、「Twitter」である。2006年に開始されたサービスが、なぜここに来てヒットしているのか? 私は、2007年の春にアカウントを取ったが、少し触っただけで放っておいたままだった。実はそういう人は少なくないらしく、今頃になってそのメディアとしての可能性が再発見されている感じだ。Twitterの広がり自体が、ゾクゾクするような胸騒ぎのする出来事になっている。

 ネットの世界の新しい動きに敏感なユーザーが積極的に使い、優れた本も何冊も書かれている。Twitterの中でも、自分たちが今使っているサービス(Twitterや関連ツール)に関する話題は少なくない。昨年までの会員数の伸びから推定して、日本での利用者数は、400万人を超える盛り上がりになっているものと思われる。仮に、これが一過性のブームで終わるとしても、Twitterが内包していたメカニズムのいくつかは、何らかの形で残るはずだ。要するに、1つのトレンドを作ったと思える。

 Twitterには、いくつかの際だっだ特徴がある。たえとば、ミニブログとは言われるものの140文字しか書けない。「フォロー」という仕組みによって人のネットワークができる。それによって、「タイムライン」という自分のトップページが変わる。「ハッシュタグ」によって、トピックを整理できる(これはTwitter自身が用意した機能ではないところが注目すべき点なのだが)。また、第三者がTwitterに関連するサービスをいくつも立ち上げている点も大きな特長だ。

 それらがどれくらいの威力を持っているかは、実はアスキー総研自身が経験している。2009年8月に実施して販売を開始した『iPhone利用実態調査』というレポートは、販売開始直後に1件売れた後は売れなかった。ところが、1週間後からほぼ毎日売れるようになったのだ。調べてみると、iPhone関連のコミュニティにいる1人の「つぶやき」がきっかけで、情報が広く伝播していったことがわかった。

 そんなわけで、Twitterは「コミュニケーション革命」と見るのが一般的だろう。アスキー総研でも、2009年12月に『Twitter利用実態調査』というものを実施した。11月に実施した『MCS(メディア&コンテンツサーベイ)』の約1万人の集計結果から、Twitterに関連する要素を抽出。より踏み込んだTwitterのユーザー動向を約300人を対象に実施して、これらのデータを照合した。そして、12月26日に「『Twitter利用実態調査』結果のお知らせ」というリリースを出した。

 詳しい内容は、同リリースをご覧になっていただくのが早いが、今Twitterを利用しているユーザーの姿を、さまざまな角度から分析できる。また、1月中旬に発売予定の『Twitter利用実態調査詳細レポート』では、Twitterと他サービスの利用者の間で、プロフィールや接触媒体、ネット上での消費傾向の違いなどについて詳しく分析する予定である。Twitterの自社業務での活用を検討している場合には有効な基礎資料となるはず。


情報が損なわれていくのではなく
新たな知識情報処理が行われている

 さて、そんなふうにTwitterを見てきたわけだが、1つ重要なポイントに気づいていた。1980年代のパソコン通信や草の根通信、UNIXのネットワーク、そしてデジタル上のコミュニケーションを見てきたわれわれとしては、「おやっ?」と思えることがあった。Twitterでは、「Reply」(返事)、「Retweet」(そのまま再度つぶやく)される過程で、情報の中にノイズが入り込んでいくのだ。

 たとえば、私が『Twitter利用実態調査』のリリースを出したことをつぶやいた結果どうなったか? 2009年12月28日に、私がつぶやいたのは、

というものである。これが、100個以上のRTやReplyを経るうちに、コメントが追加される、質問や疑問、ケチもつく。簡単に整理してみると、次のようなことが起きている。

(1)伝聞
そのままRetweet(RT)される。ただし、誰がRTしたかがTwitter IDの形で埋め込まれるので、属人性が加わるともいえる。
(2)批評
「やっぱり平均年齢高いなw」など感想が加えられる。ユーザーとの意識の差という情報が付加されたともいえる。
(3)増幅
「あはは、納得」など、データの説得力が強調される。わかりやすく言い換えてくれるケースもある。
(4)付加
好きなTV番組は『タモリ倶楽部』など、リリースの中の注目ポイントなどの情報が付加される。
(5)展開
情報を伝聞しない単なるReplyから、新たなTwitterに関する議論ももちろん始まる。

 以上は、情報が広がるときにどんなノイズが加わったか、あるいは損なわれたかだけを書いているが、問題点を指摘するなど、抑制的に働くコメントもある。あるいは、

「意外に高年齢」

というコメントに対して、「年齢は男女でもかなりのズレがあるようです」とReplyしてやると、これが新たにRTされたりする。今回はそれほどにはならなかったが、発信元が再度つぶやくことで議論や第二波の伝聞が始まることがある。

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ