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実は挑戦的な薄型テレビ!? 三菱「REAL MZW300」

2009年12月16日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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薄型テレビの弱点にメスを入れる! 音質も大幅に進化

一体型ながら、独立したキャビネットを備えるスピーカー部。左右合計で6つのユニットを内蔵した本格的な作りだ

一体型ながら、独立したキャビネットを備えるスピーカー部。左右合計で6つのユニットを内蔵した本格的な作りだ

 薄型テレビの内蔵スピーカーの音質が少々貧弱で、テレビ放送を見るには困らないものの、映画などを十分な迫力で楽しむには実力不足というのは、すでに多くの人が気付いているだろう。

 映画鑑賞などを楽しむなら、ホームシアター機器を追加すればいいとも言えるのだが、それならばいっそのことスピーカーを省略してその分安くしてくれた方がいい。薄型スピーカーの高音質化は、サイズやコストの制約が厳しく、一般的な価格の薄型テレビでは難しい部分なのだが、それにしてもハイビジョン画質の映像に比べてクオリティーの差が大きすぎる。これに対する対策は、他社でも本格的な取り組みが行なわれはじめている。

 本機の場合は、まず根本であるスピーカー部を新開発。46V型で4.1リットルの容積を持つ「新DIATONEスピーカー」を搭載した。2.1chスピーカーの内部には、口径7cmのウーファーを2個、ネオジウムマグネットスピーカー(口径4cm)を左右合計4個内蔵している。アンプ出力も合計40Wと内蔵スピーカーとしては大出力となっている。これに、スピーカーユニット内で生じる音の乱れをデジタルで補正する「DIATONEリニアフェイズ」などの高音質技術を組み合わせた。

「ダイヤトーンHD」の設定画面。「入/切」が選択できるが、常時「入」で使って問題ないだろう

「ダイヤトーンHD」の設定画面。「入/切」が選択できるが、常時「入」で使って問題ないだろう

 もうひとつの特徴が音声補間技術「DIATONE HD」。これは、デジタル放送の音声であるMPEG-2 AACなどのデジタル圧縮音声の欠落した情報を補間する技術。圧縮によって間引かれた情報や、高域の周波数成分を補うことで、オリジナルに近い音質を再現できるものだ。

 まずはDIATONE HDなどをすべてOFFとし、スピーカーの素の状態で音を聴いてみた。声の帯域がしっかりとした音質で、クセのない自然な音色だ。特に重低音が出るというほどではないが、聴きやすくクリアなサウンドである。

 これにDIATONE HDを加えると音が一変する。中域が厚くなり、声の張りが出てくる。情報量が増えるというほどではないが、音楽を聴いても個々の音が明瞭で聴き応えのある音になる。これはかなり有効だと思った。実際のところ、こうした圧縮音声の補間技術はAVアンプやホームシアター機器では当たり前の機能であり、圧縮音声を採用したデジタル放送で効果が大きいのは当然。逆に言えば、なぜ、この機能が今まで薄型テレビに採用されなかったのが不思議なくらいだ。最初は案外良い音に感じた内蔵スピーカーの音も、DIATONE HDなしで聴くとやや薄っぺらく、ひ弱な感じとさんざんな評価になってしまう。これは常時「入」で使っていいだろう。

 このほか、重低音設定もあり、こちらは「強/中/弱/切」が選べる。「切」よりは「弱/中/強」の方が低音が伸び、ベースラインなどもはっきりと聴こえるようになる。ただし、「強」になると中低音も増強され、声がややくもりがちになるので、好みで聴き比べてから選びたい。ただし「強」でも内蔵スピーカーにありがちな「ボコボコ」「モーモー」した鈍い低音にはならず、わりと弾力感のある低音になっているので、決して聴き心地は悪くない。

「おすすめ音量」の設定。切/標準/ナイトモードが選べる。音量の差(ダイナミックレンジ)の再現は、切が最大で、標準、ナイトモードとなるほどに小さくなる

「おすすめ音量」の設定。「切/標準/ナイトモード」が選べる。音量の差(ダイナミックレンジ)の再現は、「切」が最大で、「標準」「ナイトモード」となるほどに小さくなる

 日常的に使いたいと思ったのが、「おすすめ音量」だ。これは他社でも採用されつつあるテレビ番組とCM、あるいは外部入力のBDソフト再生時などの音量差を抑え、突然大きな音が出てびっくりするようなことを防ぐ機能。「標準」のほか「ナイトモード」もあるので、深夜に小音量でテレビを見ているときも、迫力ある音はそのままに、近所や周囲の迷惑にならない視聴ができる。

内蔵スピーカーの「サラウンド」設定。「DIATONEサラウンド5.1」は、切/モード1/モード2が選べる。このほか、広がり感を高める「ワイドサラウンド」も併用できる

内蔵スピーカーの「サラウンド」設定。「DIATONEサラウンド5.1」は、「切/モード1/モード2」が選べる。このほか、広がり感を高める「ワイドサラウンド」も併用できる

 このほか、内蔵スピーカーだけでサラウンド再生が楽しめる「DIATONEサラウンド5.1」やヘッドホン視聴時でもサラウンドが楽しめる「DIATONEサラウンドヘッドホン」も備える。DIATONEサラウンド5.1は、いわゆるバーチャルサラウンドで、サービスエリアが広いことが特徴。家族みんなで見るような場合に効果が大きい。ただし、広がり感や移動感は少々不足気味。せっかくのクリアーな音がサラウンド効果でぼやけて感じることもあるので、個人的には、内蔵スピーカーで楽しむならサラウンドは使わないで視聴した方が良かった。

「サラウンド」設定の「ヘッドホンサラウンド」では、ヘッドホンのタイプを選択できる。カナル型やインナーイヤー型は「イヤホン」を、オーバーヘッド型は「ヘッドホン」を選択。低音の再現に違いがあるようだ

「サラウンド」設定の「ヘッドホンサラウンド」では、ヘッドホンのタイプを選択できる。カナル型やインナーイヤー型は「イヤホン」を、オーバーヘッド型は「ヘッドホン」を選択。低音の再現に違いがあるようだ

「ヘッドホン設定」の画面。音質の調整のほか「ヘッドホンダイヤトーンHD」も入/切が選べる。こちらも常時「入」で使えると思う

「ヘッドホン設定」の画面。音質の調整のほか「ヘッドホンダイヤトーンHD」も入/切が選べる。こちらも常時「入」で使えると思う

 サラウンドをしっかりと楽しみたいなら、ヘッドホンをつなげてDIATONEサラウンドヘッドホンを「入」にして楽しみたい。こちらは移動感や広がり感もかなり明瞭で、深夜に映画を楽しむような場合も大音量で豊かな臨場感を楽しめる。内蔵スピーカーのサラウンド再生を備えるモデルは多いし、効果も似たり寄ったりだが、より効果が大きく深夜でも大音量が楽しめるヘッドホンサラウンドを楽しめるモデルは少ない。この点も本機の大きなメリットと言えるだろう。


画質・音質の充実に加え、使い勝手の点でも熟成が進んだ

 じっくりとテストした結果、本機はMZWシリーズの完成形と言っていいほどの熟成が成されたモデルと感じた。前機種までは画質・音質についてはかなり優秀ではあるものの、メニュー画面の古臭いデザインや低解像度グラフィックによる視認性の悪さが気になるなど、万人にお勧めしにくい部分もあった。

 もともと誰にでも使える親しみやすさを意識した操作系であっただけに、他社モデルと比べたときの見劣りはもったいないと感じていたが、そういった点はしっかり解消され、いよいよ万人にお勧めできるモデルに成長したと感じた。

 もちろん、画質、音質もかなり成長してきている。今後もさらに進化は続くだろうが、本機の実力なら、10年単位で長く使うことを考えても、十分な映像と音を楽しめるモデルだと思う。

 惜しむらくは、「アクトビラ」やDLNAなどのネットワーク機能を潔く省略している点。こちらへの対応も期待したいところではあるが、画質・音質に徹底してこだわる路線もアリだ。ネットワーク機能は今ならレコーダーや単体ネットワークプレーヤー的なモデルも登場しているので、それらで補えばいいだろう。


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