今月4日、AHSから新しいボーカロイドソフトが一挙に発売された。ラインナップは「ボカロ小学生 歌愛ユキ」や「ボカロ先生 氷山キヨテル」など。現役小学生の声を収録した歌愛ユキ、男性ボーカロイドの弱みとされていた高音が強みという氷山キヨテルと、ラインナップはいずれも今までのボーカロイドとはピリッと一味違うものばかりだ(関連記事)。
そこまで聞かされたら、彼女たち新人ボーカロイドに自分の曲を歌ってもらいたくなるってものだ。とはいえ、DAWソフトはもちろん、DTMをやったことなんてまったくナシ! それでも誰かプロに「お手本」を見せてもらえば、案外出来ちゃうんじゃないだろうか?
そんなベタベタの甘い期待を胸に、以前インタビューをお願いしたボーカロイド作家・キャプミラPこと、映像作家の丹治まさみさんに、「歌愛ユキでASCII.jpのジングルとか作れませんかねー」という意味不明なムチャ振りをして、ボーカロイドにうまく「歌ってもらう」コツを公開してもらうことにしたのである。
キャプミラさんは90年代にインディーズロックバンド「アポジーズ」にギタリストとして参加していたミュージシャンでもある。記事で紹介しているのは、ニコニコ動画の用語にならえば「プロの犯行」とも言うべき熟練の技巧なのだ。
AHSからはテキスト読み上げソフト「ボイスロイド」2製品も同時に発売されている。キャプミラさんいわく「ラップやポエトリーリーディングなどに挑戦させてみると面白いかも」。気になった方は詳細をウェブサイトでチェック。
それではさっそく始めていただこう。キャプミラさん、どうぞ!
Step#1 まずはDAWソフト「Samplitude」でベースラインを作成
まずはDAWソフトでベースとドラムから打ち込んで行こう。僕は「Samplitude」を使っている。これは日本ではかなりマイナーな部類に入るソフトなのだが、とにかく単純で分かりやすい操作系と音の良さが気に入っている。波形編集にも優れていて、切り貼りした波形ごとに別のエフェクトをかけたりピッチや音長を変えたりといったことが簡単に出来る。日本人ユーザーがもうすこし増えるといいのだが……。
打ち込みに関しては特殊なことは何もしていないが、僕のスタイルとして、打ち込んだ先からトラックを波形化していく。後でいろいろ迷いたくないのと、CPUへの負担を軽くするためだ。後から「こんなフレーズが欲しい」と感じたら、なるべくそれまでの波形を切り貼りして新しいフレーズを作り出すようにしている。そうすることによっていわゆる「DTMっぽさ」を軽減できるからだ。
また、作業のなるべく早い段階で「ラララ……」のハミングでもいいのでボーカロイドの仮歌を載せてしまうこと。声の印象やメロディラインから導き出されるフレーズというのは非常に大事だからだ。そんな感じであれこれ作業をして、大体曲の全体像が見えてきたあたりでいよいよボーカロイドの打ち込みに入る。なお、「Samplitude」のエンジンを使って作られた、手軽で高機能な「Music Maker」シリーズがAHSから販売されている。価格は通常版で1万4800円と安価だ。
