人の心を掴んで離さない「生っぽさ」
なぜこれほどまでに人を惹き付け、ヒットしたのか。その理由のひとつに、ラブプラスはいわゆるギャルゲー好きとは異なる層に受け入れられたという背景がある。内田氏によると、ガジェット好きやネットでの情報にアンテナを張り巡らせている人、自分から情報を収集してソースを多岐にわたって持つ人が多いという。
「ゲームの特異性、遊びの中にニュース性があったと思う」と内田氏は分析している。通常は大手掲示板に集うユーザーの中だけで情報が回るケースがほとんどだが、ラブプラスは違った。ゲームファン以外の人たちがブログや掲示板で話題にしたことにより、一般誌や新聞に話が飛び火しやすかったのだ。
通常、ギャルゲーの年齢層ピークは10代後半~20代前半。これはアキバ系のピークと重なる。ラブプラスは25~30歳がピークで、さらに休眠ユーザーが掘り起こされている。以前はギャルゲーをやっていたが、社会人になり結婚して家族もできたしでゲームから離れた、そんな人たちがラブプラスのイノベーターになった。ギャルゲーの金字塔、「ときめきメモリアル」の発売が15年前。「『ときメモ』をやったけどヘビーユーザーとまでは至らなかった層がラブプラスに戻って来てくれた」(内田氏)
では、それほどまでにユーザーの心をつかんだのはなぜか。ラブプラスの製品コンセプトであり最大の特長である、「生っぽさ」だ。
これまでのゲームであれば「触ってもオーケー」マークが出れば100%触れる仕様だった。しかし、ラブプラスは触ってもオーケーマークが出たとしても、本当に相手が触っていいと思っているのかどうか、相手の反応を見ながらアクションを考えなければならない。強引なプレイスタイルになれば、彼女は最初からあからさまには拒否しない代わりにストレスが溜まっていく。そしてある日、「今日は(触られるのが)嫌なの」とハッキリ拒否されてしまうのだ。
(C) 2009 Konami Digital Entertainment
「もしかして触りすぎたかな、マズイことしたかなと思ってもらえたりして。『触っていいマーク』が出てるのに拒否される、それって仕様のバグじゃないのかという問い合わせもいくつかありました(笑)」(石原氏)
筆者もラブプラスをプレイした者の一人だが、事実、この「生っぽさ」にはかなり心を揺さぶられた。例えば、「ねぇ……、『ねぇ』でわかって」(触ってほしいときの言葉)と言われたから腕にタッチすると「嫌。なんなのいったい」と不愉快な表情になる。「キスしたい」と言われたから、アップになった顔中を懸命にタッチペンで撫でるも、残念そうな顔をされる。うっかりデートの約束をせず、彼女の誕生日が過ぎ去ってしまえば「私の誕生日、忘れてたんだ……」と恨み節を聞かされる。
「アンタ、さっき触っていいって言ったよね!?」「じゃあどこをどーすればいいっつーの!」「わざとじゃなくて、たまたま!」と何度声高に叫んだことか。我ながら大人げなく恥ずかしいくらいにガッチリのめり込んでしまっていた。