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「お義父さん」が語る、ラブプラス開発とヒットの理由

2009年11月27日 20時00分更新

文● 野田幾子

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「経験」がゲームの面白さを加速する

 このリアル感は、多くの女性にヒアリングした結果なのかと思いきや、意外にもシナリオを担当したスタッフの中には女性が1名しかいないのだという。多くのアイデアがメインシナリオを担った内田氏の頭の中から生み出された。礎になったのは、少女漫画や恋愛ドラマ。あとは、氏の交際経験だ。

 「大人の方に、高校生に戻って遊んでほしい。それがラブプラス開発時からのコンセプト。いい意味で行間を読んで遊ぶゲームにしたかったし、その行間はそれぞれの方の経験で満たしてもらいたいんです」

ゲームに登場するほとんどのアイデアは内田氏によるもの。開発スタッフの中で女性は1人だけだったという

 大人になると高校生の恋愛はどうしても出来なくなる。仮にいま女子高生と付き合えたとしても、自分は高校生ではない。大人になればなるほど、高校生のときの恋愛への憧れの気持ちが大きくなる。

 「クラスの一番かわいい女の子と付き合ったらあんなこと言うのにな、一緒に帰れたらこんなことするのになとか、中高生男子って日々そういう妄想で頭を膨らませてますよ。30~40代になってから思い返すに、その頃が恋愛に対して自分が一番ピュアだったし、楽しかった。だいたいの大人は、その頃の思い出を心の汚れていない部分で保って生きているはずです」

 ピュアな高校時代を思い出してもらうべく、極めて王道な心理描写を心がけた。例えば彼女を触りすぎたらちょっと身をひいて「それはやめて。ホントに嫌なの」と言ったりする。男性目線の可愛いキャラクターだったら「キャー! エッチ!」という反応になっていただろう。

 確かに、「高校生活って部活やバイトでいい感じの女の子いたよな~」「過去、彼女の態度が急に冷たくなったのってそういうことだったのか」等々、筆者の周りではラブプラスをプレイすることで過去の経験を思い出したという意見がよく聞かれる。これは内田氏の狙いどおりだったということになる。

計画段階ではいわゆる「二股」ができる仕様も検討されたが、ユーザーの気持ちをおもんばかり、却下したのだとか

 そのコンセプトを大切にしたかったからこそ、あえてお蔵入りさせたアイデアも存在する。当初の案ではヒロイン3人の間をプレーヤーがさまようゲームにすることで、多くのキャラクターを楽しんでもらう仕様を考えていた。別離して別の彼女に走ってもいいし、二股をかけることもできる。

 しかし、高校時代のピュアな恋愛を追求するゲームならば、ヒロインたちがピュアに主人公であるユーザーを思えば思うほど別離の際には傷つかなければならない。ユーザーに女の子を傷つける耐性がどれくらいあるのかと疑問が生じてきた。

 「入れ込んでもらえばもらうほど、他のキャラクターでも遊びたいと思ったら『振ってください』というのでは……。上等だと想う人もいるでしょうが、なんてひどい仕様だと思う人もたくさんいるんじゃないかなと思いました」(内田氏)

 二股や別離といったストレスは現実世界の中で十分に感じているのだから、わざわざゲームの中に入れなくてもいいのでは、という結論に至った。

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