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ストレージ管理の切り札 「ARX」を深く濃く解説 第1回

管理者を悩ませるファイルストレージの増大

容量が増えると管理の手間が増えるってどういうこと?

2009年09月29日 13時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ARXのグローバルネームスペースで
ファイルストレージの課題は一掃?

 こうしたファイルストレージの課題を一気に解消してくれるのが、F5ネットワークスのファイルストレージ仮想化装置「ARX」である。

 前述したファイルストレージの問題の根源には、ファイルストレージとユーザーが物理的にマッピングされてしまっているという現状がある。物理的に異なるファイルストレージがある場合、これらは個別に管理しなければならない。またユーザーがファイルストレージを使っている間は、マイグレーションやバックアップを実行できない。

 では、このマッピングを断ち切り、ユーザーに対して複数のファイルストレージを単一のストレージプールとして見せるような仕組みがあればよいのではないか? このアイデアを具現化したのが、ARXだ。

ARXではグローバルネームスペースというレイヤでファイルストレージを単一のストレージプールとして扱う

 ARXは「グローバルネームスペース」という仮想化のレイヤを導入することで、複数のファイルサーバやNASを束ねることができる。ARXがエンドユーザーと背後にあるファイルサーバやNASとの間を中継し、データ配置を最適化してくれる。しかもARXではストレージ管理の負荷を軽減する各機能を、異なるベンダーのNASやファイルサーバが混在した環境で使える。高価なベンダーの製品で揃えず、用途にとって低価格なストレージを選択できるため、コスト削減にも大きく寄与する。

 では、ARXでは具体的にファイルストレージをどのように最適化してくれるかを見てみよう。

無停止でのマイグレーション

 まずは、無停止でデータのマイグレーションを行なえるというメリットがある。これはARXが物理的なディスク状態をユーザーから隠蔽しているために実現できるものだ。業務時間外に面倒な停止調整を行なってファイルストレージを停止せずとも、増設作業が行なえるため、ユーザーの要求に迅速に対応できる。

サービス停止なしでマイグレーションが可能

ファイルストレージのロードバランシング

 また、複数のディスクの使用率が均等になるようにデータを適切に配置してくれるロードバランシングの機能もある。前述したようなサーバやディスクごとの利用率のばらつきをなくすので、ストレージの利用効率を大幅に向上することが可能になる。

ファイルストレージの利用率を平準化するロードバランシング

自動レプリケーション

 さらにデータ保護を実現するための、自動レプリケーションという機能もある。これは異なるボリュームに同じデータを書き込み、複製するというもの。管理者に手間をかけずにデータを保護することができる。また、異ベンダー間の機種が混在した環境でもレプリケーション可能なので、コストを抑えたディザスタリカバリ対策が実現する。

サービスを停止せずに異ベンダーのNAS・ファイルサーバ同士でレプリケーションできる

ファイルの階層化管理

 そして極めつけは、ファイルの更新日時/アクセス日時で格納するストレージを分ける階層管理(ティアリング)の機能である。たとえば更新日時が最新のファイルは高速なファイバチャネル対応のHDDで、アクセスの古い非アクティブなデータは安価なSATA HDDに格納するといった処理をポリシーとして設定し、自動的にマイグレーションできる。格納先に合わせてバックアップメディアや頻度も分けることも可能になるので、メリハリのついたストレージ投資や手間の削減が実現するわけだ。高価なディスクアレイ装置のオプションとして搭載されている階層管理をアプライアンスで実現するということで、注目したい部分だ。

使用するデータに合わせてストレージを使い分けるファイルストレージの階層化

(次ページ、ストレージ運用管理を効率化 コスト削減にも寄与)


 

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