pixivはイラストでやりたいことを試せる実験場
―― pixivやニコニコ動画が出てきて、同人作家の界隈に何か変化はありましたか。
huke 極端になりましたね。現実と同じように落差が激しくなったというか。目立たない人は全然目立たないし、目立つ人は徹底的に目立つようになりました。それが良いか悪いかっていうと、僕は恩恵を受けた方なので何とも言えないんですけど、目立たない側の人にはかなり難しい状況にはなっているかもしれません。
―― ネットでの活動と、普段の仕事での違いはありますか。
huke pixivにアップした自分のイラストを見ていると、どんどん描き込みの量が増えていて、こだわりが強くなっているのを感じます。やっぱり人に見られて反応があるっていうのは大事ですね。
それと、ネットでは自分のやったことのないことをやろうという気持ちが強いです。絵柄を極端に変えて、pixivに投稿することで反応を見て、どの絵柄が一番いいのかを探ったりしました。結果的に生まれたのがブラック★ロックシューターのような黒っぽい色使いのタッチなんですけど。あれが一番、評価が高かったので。
―― なるほど。あの絵柄はネットに投稿する中から、実験的に生まれてきたものなんですね。
huke そうですね。実験を繰り返す中、結果的に一番良かったのがブラック★ロックシューターだったんです。それまでかなりスランプに悩んでいたんですが、あのイラストを投稿することで評価を得て、自分の中でのモチベーションが戻った、という感じでした。ただ、現在の絵柄についてもいずれ飽きてしまうでしょうし、また違う絵柄を模索すると思います。
―― スランプを脱出されたのは、周りの評価を得られてからですか。それともご自身で納得されてから?
huke 描いてる途中から何か気持ちよさは感じていました。スラスラと描けるというか……。絵を描く楽しみや面白さをつかめたというか、思い出せる手ごたえでした。僕の中ではまず「自己満足出来る」のが最低ラインとしてあるんですね。そして自己満足できて、なおかつ他の人に褒められるのが一番嬉しいです。
―― その後、絵に対する気持ちの変化はありますか。
huke やはりポジティブに取り組めるようになりました。それまではそこまで背景とかを描きたいと思う方ではなかったんですが、今はクオリティーを上げるためなら必要なことはやろうという気持ちになっています。
―― それまでの絵柄と変わったことで、ファンからの反応はありましたか。
huke それまで、ファンがいたのかは分からなくてですね(笑)。ただ、その頃からゆるやかに「厚塗り」の濃いタッチに移行していたので、塗り方はそんなに変わりはないんです。
―― あの絵柄は何かから影響を受けているのでしょうか。
huke メタルギアの仕事をしているとき、アシュレイ・ウッド(Ashley Wood)というアメリカのアーティストにはかなり影響を受けましたね。その頃の自分の趣味としては、汚れや錆びなど、ちょっとディテールが荒いモノっていうのが凄い好きで、それに凄いマッチしていて強く影響されました。
―― プロとしての活動と、ネットでの個人活動の違いはどういうところですか。
huke やったことがないことにチャレンジできることかな。ブラック★ロックシューターのPV制作で言えば、人とコラボレーションするというのはこれまで全くなかったので、とにかく新鮮でした。それと、自由だっていう気持ちじゃないかと。好き勝手出来て楽しいですよね。