SIPの動作
IP電話は、従来の電話に相当するサービスを、インターネットや企業内IP網を使って提供する仕組みだ。従来の電話網では、電話の発着信の制御から通信路の確保や切断といった「呼制御」を電話交換機が一手に引き受けていた。現在使われている多くのIP電話では、このような呼制御をVoIP(Voice over IP)アダプタとSIPサーバが「SIP(Session Initiation Protocol)」というプロトコルを用いて対話処理することで行なっている。また、音声信号は伝送遅延を最小限にするため、処理の簡易なUDP上で動作する「RTP(Real Time Protocol)」というプロトコルで運ばれる。
SIPはHTTPやSMTPを参考にして設計されたため、ホスト間でやり取りされるメッセージは簡潔で短い。そのため、TCPではなくUDPで動作し、機器への実装も容易になっている。SIPに対応した機器は、通常、相手からのメッセージを5060番のポートで待ち受ける。以下、SIPの動作を図4の例で説明する。
- 呼び出し側(電話機AのVoIPアダプタ)は、SIPサーバ宛にINVITE(招待)コマンドを送信する。このメッセージには、通話相手(電話機B)の電話番号が“SIPアドレス”の形式で指定されている
- SIPサーバは、電話番号を受け側のVoIPアダプタのIPアドレスに変換し、INVITEを転送する
- 受け側(電話機B)のVoIPアダプタは、電話機Bのベルを鳴らすと同時に、SIPサーバへRinging(呼び出し中)応答を送信する
- SIPサーバはRingingを呼び出し側へ転送する
- 電話機Bの受話器が取られると、受け側のVoIPアダプタはOK(成功)応答をSIPサーバへ送信する
- SIPサーバはOKを呼び出し側へ転送する
- 呼び出し側は、受け側からのOKを元に、Ack応答を受け側に送信し、VoIPアダプタ間に通信セッションが生成される。それから、音声がRTPで運ばれる
- 電話機Bの受話器が置かれると、受け側のVoIPアダプタはBYE(切断要求)コマンドを送信し、セッションを終了する
SIPのアドレス
SIPではHTTPと同じく、URI(Universal Resource Identifier)で相手先を指定する。SIPのURIの書式は「sip:ユーザー名@ドメイン」である。ユーザー名の部分に電話番号を入れることができるので、IP電話では「sip:電話番号@ドメイン」のようになる。同一ドメイン内であれば、ドメインを省略することができるので「sip:電話番号」となる。
IP電話で企業の内線電話網を構築した場合や、050で始まるIP電話番号を指定する場合は「sip:電話番号」の形式が使われる。
この連載の記事
-
第7回
ネットワーク
帯域を効率的に利用するTCPの仕組みとは? -
第6回
ネットワーク
TCPのコネクションとはなんですか? -
第5回
ネットワーク
TCPのキモはコネクションとポート番号 -
第4回
ネットワーク
ルータの向こうに広がるネットワーク -
第3回
ネットワーク
特別なIPアドレスって知っていますか? -
第2回
ネットワーク
TCP/IPはどのように普及していったの? -
第1回
ネットワーク
TCP/IPの基礎の基礎を理解していますか? -
ネットワーク
TCP/IPまるわかり - この連載の一覧へ